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番:最強のライバルの登場です!?前


※一応、シーズン3後。
死亡ディセップ生きてたりご都合ありです。


喧嘩らしい喧嘩はない。元より二人共怒りっぽい性格ではないし、マイペースだ。
大きな不満もなく、それなりに幸せな日々。様々な惑星を旅をして、武器の仕入れ、販売を行う。ネックなのは一つだけ。


"よぉ、ルナ!このイケメンに会えなくて寂しかったんじゃねーの?"
「あ、スタースクリームさん。こんにちわ。」


…こういう輩がまた増えた。大抵の客は有機体である彼女に何の興味も示さない。異星人と出会うのは宇宙空間では珍しくないし、同族でなければ用だけ済ませてさよならだ。
だが金属生命体の一部にとってはそれは当てはまらないようで、モニター越しにルナに嬉々として話し掛けるスタースクリームの姿はスィンドルの機嫌を確実に低下させた。
ルナもその不穏な空気を感じてはいるものの、どうにも出来ず話を進める。今は大切な仕事中だ。彼は羽振りの良い商売相手で、無下にすることも出来なかった。
通信が終わると、スィンドルは直ぐ様彼女を掬い上げる。怒っているのだろうか。恐る恐る見上げると、紫色の目と視線が合った。


『解ってますよ、仕事ですから。』
「スィンドルさん…私、」
『でも、やっぱり裏方に戻しましょうかねぇ。君目当ての客が増えても私がストレスですし。』
「…私は構いません。倉庫の整理も好きですよ?」
『…はあ』


ふわりと笑って、指を撫でてくる彼女にため息が漏れる。勝手な独占欲が時々馬鹿らしくなるくらい彼女はとても素直で従順だ。だからこそ、怖い。我が儘を言わない彼女がいつかこの生活に嫌気がさして地球に帰りたいと言い出した時、このスパークは果たしてその現実に耐えられるのか。


『ルナ、たまには我が儘も言っていいんですよ?』
「どういう事ですか…?」
『私の言うことに君はあまりに文句を言わないから、』
「…、スィンドルさんは私に反抗期を期待してます?」
『正確にはそうじゃありませんけど、ねぇ…』
「不便が全くないかと言われたら、困りますけど。でも私、今幸せだと感じています。そうですね…出来るならサリ達と連絡を取らせてもらえたらとても嬉しいですが。」


目を伏せて、ルナは嬉しそうに微笑む。スィンドルは彼女を抱いたまま唇を寄せた。一人きりでずっと船に閉じ込めていては可哀想だとも思う。人間は本来、群れで行動する者が多いと聞くし、その相手が人間の友人ならばと彼は快くその願いを承諾した。


『いいでしょう、頻繁にでなければあの地球人との交信を許可します。』
「えっ…ほ、本当に?」
『ただし、オートボットとは関わらないと約束してください?メガトロンさんの部下ではありませんけど、一応、私、ディセプティコンですから。』


ウインクして、小さな頭をくりくり撫でる。彼女はメインルームを出ていくスィンドルを戸惑いながらぼんやり見つめた。何を考えているのか、分からない。独占欲の強い彼が何故急にそんな事を言い出したのか…しかし喜びの方が勝り、ルナは嬉々として携帯の電源を久しぶりにいれた。コールボタンを押して三回で、通話の画面に切り替わる。不安もいっぱいの中、彼女は恐る恐る口を開いた。


「も、もしもし?あの…サリ?」
『……すまないが、君は誰だろうか?』


驚いた事に、サリの電話には全くの別人が出た。慌てて切りそうになるが、落ち着いた声で制止される。大人の男性の声。しかしサムダックさんやオプティマスとはまた違うものだった。


『もしかして、君は…ルナかい?』
「…は、はい…」
『驚いたな…。どこから話せばいいのか。君、今安全な処にいるのかい?』
「…」


こちらの状況を聞く様子から恐らく声の主は間違いなくオートボットだろう。ルナは迷ったが、意を決して通話を切った。サリはどうして電話に出なかったのだろう。電源を切ろうとすると、軽やかな着信音が響く。表示されているのはサリの番号。しかしその隣に聞いたことのない名前が現れていた。

”jazz”

動揺しながら、ルナは後ろを振り返る。スィンドルは部屋にいない。しかし何処で聞いているか分からない。彼女は震える手で、電源を落とすと深いため息を吐き出した。
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2014 02 04

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