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番:たまには素直になりましょう


「…ねぇ、ルナ。私の事好きですか?」


一体、突然何を言い出すのか、ルナは電子モニター画面を見つめたまま固まった。今まで彼女も彼も黙って仕事をしていて、そんな会話になる流れは欠片ほどもなかった。
ちらりと視線だけ彼に向ける。傍で腰掛けるスィンドルは至って平静な様子でエネルゴンを口にしていた。


『ふむ、心拍数が上昇してますよねぇ』
「だ、だってそれはスィンドルさんが急に…!」
『あ、それ。』


パープルアイを瞬かせて、スィンドルはちょんと唇に触れる。大人しくルナが口を噤むと、彼はにこやかに手を離した。


『私達曲がりなりに知り合って一年は経ちますよねぇ』
「は、はい」
『ですよねぇ。なのに、未だに"さん"付け。敬語は抜けない。しつこく貴女を狙っているロックダウンにはやけに親しげだ。』
「だ、だってあの人は」
『言い訳は聞きたくありませんよねぇ、気分が悪い。』


すっと、空いたカップを差し出され、ルナは慌ててそれを受け取る。急いでおかわりを入れに行こうとすると、ふわりと摘んで彼の掌に乗せられた。


『そんな事私頼んでないんですけど。』
「えっ」


あっという間にカップに入れられ、顔の前まで寄せられる。言葉はなく、彼は質問の答えを待っているのだと、視線から彼女は嫌でも悟った。けれどあまりにタイミングが唐突で、ルナはすぐに言葉が出てこずただ顔を赤らめる。
だって、今の今まで毎日普通に旅をしてきたのだ。これからも傍に居て、変わらない日々を送るのだとそう思って過ごしてきた。
――下を見る。床までは自力で飛び降りるには遥か遠い。答えなければ彼は意地でもここから出してはくれないだろう。

拳を握る。やがて、意を決し彼女はぽつりと口を開いた。


「わ…、私、今で十分なんです。貴方が助けてくれたから、私はあの瓶の中から出られた。爆弾付きの首輪も外してもらって、感謝…してます。」
『それで?』
「……す、好き、です。その…貴方がこんな事言われて気持ち悪くないならですけ…どッ」


ひやり、金属が顔に当たる。困惑したルナは彼の唇である部分に触れ、されるままぎゅっと目を閉じた。


『全く…気持ちが悪いなら、船に置いたりする筈がないですよねぇ。』
「でも……でも、私は人間で。貴方は金属生命体だから」

『好きですよ、私は。ルナが好きです。』


幸せそうに微笑んでスィンドルはカップを机に置く。
対するルナは開いた口が塞がらず、全身真っ赤なその身を彼の視線から隠した。

…おかしい。彼はディセプティコンなのに、今日の彼はまるで。まるでオートボットや人間の男性のようだ。


『良かったです。いやぁ、同棲している身として相思相愛は一度確認しておきたかったんですよねぇ〜。ま、分かっていましたけど。』
「な、何を言ってるんですかスィンドルさん!変です!今日、変ですよ!!」
『そんなに照れなくても。だってルナ、私の事好きなんですよねぇ。まあそうですよねぇ。貴女の面倒は今やぜーんぶ私が診ているんですからねぇ』


機嫌良く笑うスィンドルをこっそりルナは顔を出して覗く。
するとまた身体は爪先で摘み上げられ、ゆらりと目の前に持ち上げられた。

"…す、好き、です"

「…!!ぎゃああぁ!!何で録音!?」
『ルナ、今のはちゃんと保存しましたからねぇ』


短い生の刻、君と居る時間を無駄には出来きないから。君ももっと素直になって欲しいのに。
慌てふためくルナを見て、スィンドルはこっそり切なげに…幸せそうに笑った。

***

(いやぁ、ブラックアラクニアさん。うまく行きましたよねぇ〜彼女の気持ちを無事聞けまして。ありがとうございます)
(女心は任せるっシャ!で、報酬っシャが…)
(勿論!例のモノ、お安くしておきますよぉ。ですよねぇ!)
―――――――――
2012 11 18

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