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13最愛の権利は譲れません


通信回線は多種多様。スィンドルが留守の時にも注文や連絡は多々入り、一人にも慣れてきたルナはある程度の事を任されていた。
非日常にも再び慣れてきた、そんなある日。


『――ルナ、…ザ…ッ、ガガ、ルナ…』


ノイズに紛れて、聞こえてきた覚えのある"声"
思わずぎくりと体が強張る。スィンドルが不在の時は文字しか送られない設定にしてあるのに、開いた回線から聞こえてきたのは確かなある人物の声で、聞き取れるコトバだった。まるで何もなかったよう、落ちついた気楽な呼びかけにルナはぐっと腹に力を込める。


「ロック、ダウン…」
『クク、どうだ?その後は……お前の家は綺麗にふっ飛んじまったみてェじゃねぇか。』
「…。」


沈黙に微かに笑う気配がする。スィンドルに連絡するべきだろうか。しかし、今は妨害電波の設定も教えられおり、努めて冷静に彼女は声を絞り出した。


「…心配していただく程ではありません。大丈夫、ですから。」
『そりゃ良かったな。おかげで俺は寂しいぜ?』


けらけらと笑う彼から真意は全く汲み取れない。…わからない、何故わざわざ通信をしてくる必要があるのか。あちらにメリットがあるとは思えない。単なる嫌がらせならスィンドルに直接ダメージを与える方法はいくらでもあるだろうし、…いくら考えても解らなかった。


『なぁ、ルナ…今、どこに居るんだ。』


一際、トーンダウンした声が彼女の心を震わせる。何も答えていないにも関わらず、ロックダウンはそんな彼女が分かりきっているよう楽しげな様子で言葉を続けた。


『お前が気に入ってるって言っただろ。ちょいと仕事を手伝えば、俺ならお前を地球に置いてやるんだぜ。』
「私、私に…そんな価値なんて」
『お前の意思なんざ関係ねェ。俺は一回、手に入れたモノは飽きるまで手元に置いておきたい主義なんだ。』

『奇遇ですよねぇ、私も同じです。だからねぇ、こればかりは無理な相談なんですよねぇ…ロックダウンさん。』


ルナが振り返るよりも早く、通信が素早くシャットダウンされる。
表情は普段と変わらないが、目は笑っていなかった。何故、どうして此処に。怖くて口が開けない。突然戻ってきたスィンドルはずかずかとルナに歩み寄り、指先で彼女の顎を持ち上げた。


『貴女を先に見つけたのは私なんですからねぇ、ルナ。もっと自覚を持って行動するようにしてもらわないと困ります。あんな輩にしつこくし・つ・こ・くつきまとわれて』
「…わ、わたし、そん
『黙って。』


唇を冷たい金属で塞がれる。傷つけないよう努めた優しい力加減にルナは顔に熱が集まる。キス…、されている。金属生命体の行為にそんなものがあるのかは分からないが、不快だと思わない事に彼女自身驚いた。抵抗しないルナに暗い心が少しずつほぐれていくのをスィンドルは感じながら、そっとルナを掌で包む。全く嫌になる。こんな小さな生き物に、感情を奪われているなど認めたくないというのに。


『ルナ、貴女は私のものです。』


主人は一人苦悩を抱えて小さな愛人を胸に寄せた。


(全く、あの泥棒のせいでこんな気持ちになるなんて)
(なかなか手に入らないってのがまた燃えるじゃねェか)

困り顔のキミは僕だけのものであって欲しくて。

さあ、どうか目の前の僕を愛して。
―――――――――
私のご主人様 完。
2012 11 07

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