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33play an important a key.


スペースブリッジを起動させているコントローラーを破壊する為、彼らは柱が赤く光る建物へ向かう。
ヒスイはラチェットのビークルの中で、目の前で敵を蹴散らしていくディーノをじっと見つめていた。


『…妬けるな。まるで恋人でも見る視線だ。』


深刻な状況でもユーモアな態度を崩さない。彼女は口元にだけ少し笑みを作ると膝を抱えた。作戦部隊が既に投入されているらしく人間が戦っているのも見える。地上の敵を倒す勇士に心強さを感じたのも束の間、空を見上げれば浮遊する敵船は数えきれない影を落としていた。


「ラチェット…私もまだ」
『おいおい、君は私の中で大人しくしてくれ。君がこれ以上怪我をしたらあの血気盛んな男に手がつけられなくなる。』


勘違いしそうになる言葉に胸がまたぎゅう、と軋む。ディーノ…赤い風を纏う彼が一瞬こちらに視線を向けた気がするが、ヒスイはあからさまに視線を逸らした。
こんな気持ちで今、彼を見つめる事は間違っているような気がして。ラチェットにも相談の仕様が無い気がした。今は戦いの事だけに集中しよう、と彼女が視線を変えた時だった。


「オプティマス!」


敵陣の中、オプティマスがジェットパックを装備して現れる。ディセプティコンをなぎ倒しながら空を裂く彼は光の矢のようで、それは何者にも揺るがない強さだった。祈るようにオプティマスを彼女は見つめる。オートボットの英雄は人間の兵士達が戦っていたショックウェーブを文字通りその手で貫き、引き裂いた。機体が分解する中で、オプティマスはショックウェーブの大型ブラスターで柱を狙い撃ち抜く。砲撃はコントローラーの設置された台座を破壊し、転送は一時的に静止した。


『降りて来い、センチネル。』
『オプティマス、自らの立場を忘れたか。』


オプティマスの言葉に激情を露わにして、センチネルはタワーの上階から飛び降りる。
始まるプライム同士の戦い。上空に集約されてくる敵船の数に、ラチェットは変形を解きヒスイをビルの影にそっと降ろした。


『ここで待て。オプティマスの援護に行かなくては。』
「ええ、」

『サム!』


カマロを見てラチェットは大きく声を上げる。降りてきたサムとカーリーを呼び寄せると、彼はヒスイと居るよう告げた。
人を付けられた事にラチェットの抜け目のなさに感心する。単独行動をしないよう、まして民間人の彼らがいれば迂闊に最前線へ出られない事を彼はよく心得ていた。


『ヒスイ、君は彼らを守るんだ。いいな?』


敵を倒すよりも誰かを守る事、それが君には一番あっているのだから。
ラチェットは早く彼女がそれに気付くよう、曖昧に頷いたヒスイを見て切に願った。
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2013 03 03

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