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16イレギュラー


千切れたケーブルの先から火花が飛ぶ。
暫くは使い物にならないであろうそれをサウンドウェーブは忌々しげに仕舞うと、眼前に立つディーノと対峙した。
真っ赤なボディはそう大柄ではないが、戦闘能力は他のオートボットより頭一つ抜きん出ている。それは過大評価でも何でもなく、彼が殺してきたディセプティコンの数に比例しての事だ。まともにやり合えば、ダメージのある自身の大破は免れない。
サウンドウェーブは向かいくるブレードを交わしつつ、ディーノから僅かに焦点を逸らした。


『オイオイ、余所見してンなよ?簡単に壊れるんじゃつまんねェ。』


彼の行動を怯えと取ったか、ディーノの口元がつり上がる。周囲に並ぶ建物の損壊など気に留める様子もなく、彼は実に愉しげにサウンドウェーブを追い詰めて行く。唯一、背後で臥している人間だけは自らの身体で隠して。
戦闘力も距離の取り方もディーノが一枚上手。ヒスイを奪い質に取る事も考えたが、圧倒的に力で押されているこの状況では近付く事すら叶わず…不本意ながらサウンドウェーブは退却を考慮せざる得なかった。


『……いいのか?あのまま女を放っておいて。直に流し込んだウイルスが彼女の身体を食い破る。』
『、』


サウンドウェーブの言葉に刹那、ディーノの動きが僅かに止まる。背中に気取られた彼にサウンドウェーブはほくそ笑むと、大きく後ろへ後退しそのままビーグルモードへ変形した。


『ッ…てめェ!』


赤い姿に振り向かぬまま、メルセデスはタイヤをフル回転させ走り出す。
追って来ない事は分かっていた。来れる筈がない。ディーノは彼の言葉に迷った。それが、答えだ。


『…殺しそこねはしたが、まだ利用価値はあったか。』

この借りは――いずれ、また。

低く笑ってサウンドウェーブは街に消える。
残されたディーノは未だ殺気の収まらない様子で、コンクリートを叩き壊したが、やがてゆっくりとヒスイを振り返った。
指先でそっと顎に触れ、センサーで身体をスキャンする。発熱と打撲は見られるが、死に至る症状は見られない。

―――嵌められた。もう少しで殺せたのに。人間に気取られ、サウンドウェーブを逃がした自分をディーノは苦々しい思いで叱咤した。


『………』


小さく肩を落として、彼はヒスイの傍に腰を降ろす。小さくうずくまる身体を見つめ、彼はそろそろと彼女を掬った。

…生きている。身じろぎしつつ、伝わってくる鼓動。悪くない気分に、ディーノは感情に反して無表情になった。…嫌いなままでいい。そう思うのにどうにも彼女に抱く感情は思い通りにならない。ディセプティコンにしてやられる程、決して懐柔などしてはいないつもりだが。

切り捨てられない命に、ただ戸惑う。
仲間達の近付く気配を感じながら、彼はそっとヒスイを降ろして背を向けた。
―――――――――
2011 10 20

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