×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



11誤解


任務の合間でサイドスワイプはご機嫌で通信回路を開いている。あちこちの写真を無駄に撮っては、送信。暫くしてまた回路を開いては受信信号を拾い上げ嬉しそうに表情を緩めた。
問わずとも相手は分かっている。ディーノはその様子を横目に、退屈そうに溜め息をついた。


『…ニンゲンとそんな事して面白いか。』
『ああ、今日、明日は非番で珍しく街に出てるらしい。あーァ、俺が今日基地に居たらなァ……』


ブツブツと小さく不満を漏らすサイドスワイプ。
こっそり回路を覗いてみれば、手を振るヒスイの映像がディーノのブレインにも流れ込んだ。アーシー達と出掛けているのか、彼女達の姿と煌びやかなガラス張りのショーウインドゥが背後に申し訳程度写っている。

(こっちが任務中だと言うのに、…暢気なヤツだ。)

ふん、と明らかに機嫌の宜しくない音を出してディーノは回路を遮断する。近過ぎる距離にその思考が伝わってしまったのか、サイドスワイプはそれを見るとニヤリと笑い、意地悪くフェラーリに幅寄せした。


『何だよ、ディーノ。気になるのか?まだまだ画像いっぱいあるぞ。』
『馬鹿言え。興味なんざサラサラねェよ。』


そう、興味などない。人間など少し触れただけで直ぐに壊れる面倒で弱い生き物。あの基地から、あの女から離れられてむしろ今、精々している。ディーノがやはり見るんじゃなかったと煩わしそうにクラクションを鳴らして突き放すが、サイドスワイプは気にせず更に言葉を続けた。


『相変わらず頑固だな。ヒスイはオマエの事も心配してるってのに。』
『…何?』


聞き捨てならない台詞にそれまで耳を貸さなかったディーノの動きがぴたりと止まる。

あの女が俺を気に掛けている、だと?
心配……心配?
自分より遥かに弱いアノ人間が…俺を?

―――何故?

ぐるぐるぐるぐる。理解不能な疑問が延々思考回路を駆け巡って、うまく意味を汲み取れない。


『…………メール、』
『ん?』
『…いや、何でもねェ。とりあえずあの女、戻ったら一発殴ってやる。』
『…!?何でだよ!?』


やがて、たっぷり間を置いて発せられたのはやたらと物騒なディーノの発言。その言葉にサイドスワイプは疑問符を浮かべ慌てたが彼は聞く耳を持たなかった。
弱い―――結論としてそう、侮辱された気がしてディーノは唐突に腹がたった。彼が今まで相対して殺せなかったディセプティコンは存在しない。
そして、これからも。

ちょうど通信回路から敵襲の知らせが入り、ディーノはビーグルモードを解き放つ。
鈍い光を放つブレードを見せつけるよう、彼はサイドスワイプに翳すと憎悪にも似た眼差しで目を細めた。


『大好きなメールとやらであの女に言っとけよ。帰ったら精々俺に会わねェようにしとけってな。』


まあどうせ近付いてなど来ないだろうが。
―――――――――
2011 10 10

[ 11/85 ]

[*prev] [next#]