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2


※微流血、性的要素あり。


冷ややかな風が頬を撫でた。
不思議と取り乱す事はなく、夜、ヒカルは静かに自分の部屋のベランダに腰を降ろす月山を見つめた。
青い月の光が、差し込む。赤と黒に光る瞳。噂に聞く赫眼は不気味な色で、それは彼が喰種である事を示していた。人を喰らう異形の怪物。


「…驚かないんだな、君は。」
「驚いてますよ。」


ただ納得がいった感情の方が勝った。研や董香は彼が喰種である事を知っていたのだろう。だから、彼と出会った日から彼が店に来ると何だか様子がおかしかったのだ。
今、二人は「あんていく」で仕事中。助けは来ない。ああ、私はこのひとに食べられるのだろうか。現実味がなくて、静かに室内へ入ってくる月山を彼女は玄関口に突っ立ったままぼんやり見つめていた。


「ヒカルさん。僕、今夜はとても喉が渇いているんだ。」
「そう、ですか。」
「迷ったんだよ?此処へ来るか、あんていくへ赴いて珈琲を飲むか。まだ時期早々にも感じた。でも君の匂いを思い出したらどうにも我慢出来なくて。」


優しくするから…、ね。
扉が閉められ密室になる。服に手を掛けられ、露になった右腕の付け根に月山は躊躇いなく噛み付いた。
激痛でくぐもった悲鳴が上がる。噛み千切られるかと思ったが、とろり、血液が流れると月山は一旦口を離し丁寧にそれを舐め始めた。
興奮した息遣い。壁に押し付けられたままの身体は恐怖で全く動かなかった。眼を固く閉じる。
赫眼を近くで見つめてしまえば何だか死んでしまうような気がして。


「…ハア、ハア…、嗚呼、やはりなんて芳しい味のする血なんだ。」
「、っ」
「痛い?それとも怖いかい?ヒカルさん。君の意見も聞かせてくれ。」
「、両方です…月山さん。」
「習で構わないよ、ヒカルさん。」


段々と力が抜けてずり落ちる身体を、月山は難なく抱えあげる。音をたてて足を離れるパンプス。
ソファに彼女の体を沈めると、彼はまた待ちきれないとばかりに傷口を舐め始めた。


「…まだ意識はあるかい?」
「、…」
「ねぇ、想像してみてくれないか。今の君を、カネキクンのが見たらどう思うだろうか。悲しみ?怒り?それを全身で受けながら君を食べる僕を。」
「止め、て…。私はいい、から」


研に手を出さないで。弱々しく月山の服を握ると、彼の掌に包まれる。唇にキスを落とされ、それから首筋へと彼の顔は降りていった。
剥がされて行く衣服が静かに一つ一つ床に落ちる。


「あっ、あぁ…い、や…、嫌!いた、ぃっ」
「フフ…今夜は飽きるまで可愛がってあげる。怖かったらカネキくんの名前を呼んでいても構わないよ。とても背徳的で、それはそれで楽しそうだ。」


ヒカルさん、貴女は綺麗だ。だから少しずつ、形を崩さないよう気をつけて、最善の注意を払って、全部解して、確かめてから、最後は残さず食べてあげる。
美しい異形の青年に抱かれながら、彼女は歯を喰いしばって悲鳴を堪えた。


「月、山さ……、」
「何だい?…嗚呼、瞼が腫れてしまうからそんな風に泣かないで。」
「、っ…あ、ぁう!ん…」


わたし、今日、死んでしまう…のかな。
朦朧とする意識の中で、月山を感じながらヒカルはされるがままだった。
彼女が甘い声を漏らすと月山は嬉しそうに微笑んだ。酷く優しい顔に困惑する。肩が痛い。何一つ、通じていないのに生理的に熱に浮かされる身体は自分のものではないようだった。


「…君はもう僕のものだ。僕だけの。」


さあ、この世界に落ちておいで。
震える程穏やかな声は、彼女の心臓を見えない鎖で縛り上げた。

大丈夫。直ぐに殺したりなんかしないよ。
人は脆い玩具だと理解している。
Letts enjoy!
さあ、楽しもうじゃないか、ヒカルさん。
―――――――――――
2014 09 23

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