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※性的要素あり。
ご注意下さい。


「まさか自分から此処に残ると決めてくれるなんてね。嬉しいよ。てっきりカネキ君に提供したアパートに君は移ると思ってたから。」
「…ごめんなさい、次の行き先を見つける迄だけ、置いていただけたら。」
「…どういう事だい?カネキ君と暮らさない、そして僕とも暮らさない、と?」
「はい。……東京を離れようと思います。」


金木研が月山の屋敷を出た後、ヒカルは一人月山の部屋へ出向いた。今の弟の側にいてはいけない。彼女はそう感じたのだ。
喰種は人口の多い東京に潜んでいる確率が極めて高いと聞いた。会社には退職の連絡を入れて必要な書類は郵送で準備をしている。後はマンションを引き払い、研の迷惑にならない場所へ移らなければならない。
彼女は混乱の中で、決断を急いていた。


「…ヒカルさん、まさか一人で逃げ切れると思ってる?例え、海外に行っても喰種は存在する。確かに、東京を離れれば喰種が掬う場所は格段に少ない。だけど、今度は人間が貴女を追うよ?」
「…」
「カネキ君の失踪はそう遠くない先に、じきに発覚するだろう。警察やCCGはどう捉えるかな?貴女の事も勿論、調べるだろう。まあ、でもその前に…僕がそんな事赦さないけど。」


一瞬だった。彼女の身体はベッドに叩き付けられていた。程よい柔らかさの寝台は衝撃を吸ったが、それでもヒカルは咳き込んだ。
押し付けられた手首が痛い。彼女が月山を見上げると、彼は久しく見なかった冷たい光をその瞳に宿していた。


「ねえ…CCGや他の喰種に貴女を取られるくらいなら、今、此処で貴女を殺しておこうかと思うんだけどヒカルさんは構わないかい?」
「習…」
「全く、どうしたら自覚するんだい?貴女は弱い生き物だ。僕に泣きついてくればそれで全て丸くおさまるというのに!そういう点ではカネキ君の方がまだ利口だよ。」
「…私は。私は貴方を自分の利で使ったりしたくない。私は…貴方とは対等な立場で向き合いたいんです。」
「…それじゃあ、尚更、ここにいるべきじゃないか。」


唇が重なる。月山の口付けは貪るように情熱的で、ヒカルの思考はだんだんぼんやりとしていった。最近は優しい彼ばかり見ていたせいで戸惑いが募る。乱暴に衣服を脱がせる月山を見上げて、彼女の目尻からは涙が伝った。
今、流されてこんな事をすべきじゃない。
しかし抵抗しながらも月山に抱かれる事を喜んでいる自分が確かにいて浅ましさに胸が潰れそうだった。月山は否定の涙と、思い違いをしていたが。


「泣いても今日はやめないよ。」
「習…、違う、私は…」
「今日はヒカルさんからもう話は聞きたくない。僕も疲れてるんだ。早く済ませて、一緒に此処で寝てもらう。貴女も昨夜はろくに寝ていないだろう。」


重なる身体に声が熱を帯びていく。月山はわざと痛みが残る抱き方をした。何処へも行けない位果てて、この屋敷から出なければいい。手足をもぐのは容易いが、彼女を傷付けて触れてもらえる機会をみすみす潰すのは忍びなかった。


「貴女も僕を愛してくれるなら、僕から離れようとしないでくれ。」


事の後、ヒカルは月山と室内の浴室で身体を洗った。シャワーを浴びながら彼女は排水溝に流れていく白い液体をぼんやり視界に入れる。
彼女の太ももから伝うそれは、普段はあり得無い事だった。彼はいつも理性的で自身で処理をしてくれていた。湯槽に浸かる月山は既に落ち着いていて、穏やかにヒカルを見つめていた。


「…大丈夫だよ。喰種と人間が交わっても子供が出来る可能性は極めて低い。でも、勘違いしないでくれ。僕はだから中にしたわけじゃないよ。」
「え…?」
「貴女をここに繋ぎ止めるのに、形あるものがあってもいいかと思ったんだ。…しかし、軽率だったね。ヒカルさんに確認しないで…今は反省している。」


手を広げて、彼はおいで、と彼女を呼ぶ。


「ねえ、ヒカルさんはもし僕との子供が産まれたらどう思う?」
「…。…今までそんな将来を考える余裕あまりなかったから正直、分からない。でも、研を見ていたら…少し怖い。私が誰かを…幸せに、なんてしてあげられるのかなって。」
「貴女は奥手じゃないけど…本当に臆病だね。」


月山は困ったように笑って、彼女に触れるだけのキスを落とした。それでもいいよ、まだ始まったばかりだからと。
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2015 02 11

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