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「今まで黙っていて、ごめん。僕、半年前の舗道で起きた事故がきっかけで喰種になったんだ。」
「…。」
「戸籍が今は違うから姉さんには連絡が行かなかっただろうけど。…僕、鉄骨の下敷きになって、大怪我をして同じように巻き込まれた…喰種だった女の人の臓器を移植された。それで、体が食べ物を受け付けなくなって……最初は気づいたんだ。」


姉の手を握ったまま、金木研は自分が喰種になった経緯を語った。淡々とした口調にヒカルは黙って耳を傾けた。
月山は席を外し、部屋には二人だけ。固い表情の姉に金木研は僅かに苦笑を漏らした。それはとても悲しい顔で、ヒカルが首を傾げると研は視線を外し前を見据えた。


「姉さんには謝らなきゃいけない事だらけだ…。こんな事に巻き込んで。姉さんの今の仕事も、駄目にしてしまう。僕の存在が姉さんから自由を奪ってしまう。」
「研…、私はそんな風に考えてないわ。」
「分かってる。でも、要らない枷だ。二度と会わないと僕が近づかなくても、他の喰種は何を考えているか何をするか分からない。月山さんの事だって僕は信用出来ない。」
「…習は、研の味方じゃないの?」


ヒカルの口から出た名前に金木研の肩が僅かに動いた。以前、会った時には「月山さん」だった筈の呼び方。姉の中で月山の位置付けはどうなっているのか。度々、自分と姉を助けてくれる月山習だが、その真意は推し量れなかった。


「…姉さん。月山さんに、完全に心を赦さないで。」
「え…、」
「月山さんは確かに手を貸してくれる人だけど、僕を食べようとしている喰種だ。本当はすぐに姉さんを連れてここから出たいけど。」
「…」
「聞かせて。姉さんには月山さんの事、好きなの?」


その問いにヒカルは俄に固まった。弟にまさかそれを聞かれるとは、というのもあったが、嫌悪感が沸かなかった事に自分自身驚いた。恋情から始まった関係ではないが、月山は優しく魅力的だった。側にいることは今や当たり前で、口には出せないが友人以上の感情を既に抱いてしまっている。
すぐに返答の出来ない姉の様子に金木研は力なく笑い目を伏せた。


「…ボクたち、異性を見る目はない性質なのかな。」
「えっ」
「ボクも、その事故で亡くなった女の子に惹かれてたんだ。その人も…喰種だった。」


そう呟いた金木研の表情は白髪に隠れ、ヒカルからは見えなかった。


「でも姉さんはボクが必ず守る。約束するよ。」


ねえ、研。
貴方をそんなに苦しめているのは何?
重荷になっているのは私の方なんじゃないの?

彼女は繋いだままの手を見つめて、そっと肩を寄せた。
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2015 02 08

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