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月山がなに食わぬ顔であんていくに再び足を運ぶと、霧島董香は既に回復してソファに座っていた。
味方とは呼びがたい彼の登場に、董香と西尾が当たり前のように敵意を剥き出しに噛みつく。思えば彼等と会話するのは一度金木研を食そうと教会で戦って以来だ。無理もない事かもしれない。彼はそれを平然と受け流すと、店内へ入った。
口では信用出来ない、などと喚いていたが、断りきれない事を月山は理解していた。行動には力が要る。こちらとしても彼らと仲間だなんてうすら寒い。悲しむ振りをする裏側で、冷たい嗤いが浮かぶ。ただ、月山は恋人の弟であり、自分が選んだ食材を取り戻しに行くだけ。その為だけに彼は此処へ来たのだ。
月山が行動を共にする件は芳村氏によって宥められ、話は金木研救出の方向へ進んでいった。


「…店長、カネキなんですけど。まさか奴らヒカルさんにまで手を出す可能性は。」
「あのお嬢さんか…。可能性がない、とは言えないね。」
「…携帯、さっきも掛けたけど繋がらなくて。でも」

「その件については心配要らない。ヒカルさんは今、僕の家だ。」


さらりと割って入った月山の言葉に、真っ先に反応したのは霧島董香だった。彼女の青ざめた顔と、刺すような視線に月山はにっこり笑うと、困ったように肩を竦めた。これも芝居に過ぎなかったが。


「なんだい?霧島さん。僕たち付き合う事にしたって前に言っただろう?」
「何をしゃあしゃあと。…あんた、まさかヒカルさんを監禁してんじゃないでしょうね。」
「心外だな。ちゃんと大事にしているよ。彼女は食用じゃないからね。僕が喰種である事も既に話してある。」


紅い目が一瞬、光る。直後、董香の攻撃を受けても、月山は尚、変わらず涼しげだった。


「なんで…!なんで…アンタはそんな簡単にあの人を巻き込める!?あの人はカネキの姉さんってだけで、普通の人間なのに。」
「巻き込む?何を馬鹿な。それを言うならカネキ君が喰種になった時点で既に彼女は当事者だ。何年、何十年、一生隠し通すつもりだった?カネキ君にその覚悟はあったかい?」
「…、」
「霧島さん、僕は彼女をこのまま屋敷に置いても構わないと思っている。僕なら彼女を守れる。答えてくれたまえ、君はどうするつもりだったんだ?何も教えず、ただ側でヒカルを見守るつもりだった?君はそれであの人を守れると本気で思っているのか。」
「――その辺にしたまえ、月山君。…お姉さんが安全な場所にいるなら今はそれで構わない。」


芳村の言葉に、月山は少しばかり感情的になっていた心を静める。悔しげに歪んでいた霧島董香の手を払うと、興味は失せたとばかりに目を伏せた。
ヒカルはどうしているだろうか。飲ませたのはそこそこに強い薬だから恐らくまだ眠ったままだろうが。もう会いたいと、心が求める。

(……必ず、貴女の前にカネキ君を還してあげるよ。)

だから絶望に駆られた顔をしないで。
貴女の平凡な未来はもう消えてしまったけれど、貴女の大切な家族は僕が取り戻してあげるから。


そうしたら、貴女は言ってくれるかな。
僕が欲しい、僕だけの為に囁いて欲しいと願う愚かな台詞を。
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2014 12 03

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