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境界線は曖昧でもいい


※not固定ヒロイン。cp9ヒロイン主。


胸が重たい。息をすう音すら耳障りな夜。
時計の秒針が一際大きく耳に刺さる。
ベッドに転がっても、ヒスイは一向に眠れず何度も寝返りを打っていた。

嫌な任務を終えて帰った夜は、たまにこうなる。
全部綺麗に洗い流しても拭えない漠然とした負の感情。同時に言いようのない不安が押し寄せてきて、いっそこの身が潰れてしまえばと思う程に泣きたくなる事もある。


「あー…、ヒスイ。起きてるか?」


控えめなノックと聞き慣れた声に、彼女は視線だけそちらへ向ける。
なんで。と思う。扉の向こう側に彼がいる。
そう分かると、何故か鼻がつんとして涙が溢れそうになった。


「鍵、かかってない。」


それだけ小声で呟くと、扉が開く音に続いて静かな足音が近づいてくる。
上体を起こして、視線をやる。優しくヒスイの頭に置かれた手は少しだけ寝癖のついた柔らかな髪をゆるりと撫ぜた。


「…なんで来たの?」
「帰ってきたって聞いて、気になってな。」


特に何を追及するではない。
ただジャブラはそこにいて、彼女の側に腰を降ろした。
甘ったるいパフェが好きでも、
給仕係に色恋沙汰で振り回されても、
こういう所はとても大人だと彼女は思う。
彼は人の気配にとても敏感で仲間思いだ。


「ねぇ、ジャブラ。」
「あ?」
「あんた、私の事好きになったら?」


対して、自分の口をついて出る可愛げのない言葉が憎らしかった。もっと言い方があるだろうに…我ながら天の邪鬼な性格に嫌気がさす。
だが、


「好きじゃなかったら様子なんか見に来るか、アホ。」


そんな彼女を見透かしたよう、素直に欲しい台詞をくれるジャブラにヒスイは涙目で飛び付いた。
彼は強い。それは能力だけでなく、もっと根本の場所で。

LOVE OR LIKE?
そんなのどちらでも構わない。
大好きな貴方を私が独占できるなら。
―――――――――
2011 05 07

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