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Dinosaur Planet05


夜が更けて、肌寒さにヒカルはアッケラ缶に渡されていた携帯機器で火を起こした。暖を取り、少し離れた場所で体を休める。一人きりで、かつ虫の声がとても大きく、彼女は寝苦しさを感じたがレイの隣で静かに身を屈めた。
まるで夢を見ているように、眉間に皺を寄せて眠るレイ。恐竜も夢を見る事があるのだろうか。ヒカルはぼんやりとそんな事を考えながら自身も眠りに落ちていった。

翌日から、レイの骨格と外見を元に仲間探しが始まった。
規格が似ている恐竜を辿れば、群れへ帰せるかもしれない。もしかしたら、本当の仲間も見つかるかもしれないと、ヒカルはバーチャル大陸の時代を点々と移動した。

***

「……ま、分かってたけどそんなにカンタンじゃないよね。」


半日探しまわって成果なし。肩を落とすヒカルの隣でレイは美味しそうに草を食べており彼女は少しそれに癒された。
川辺を見付けて、水を掬う。食事はアッケラ缶から携帯食料を持たされていたが、水分補給は自力だった。多分、飲まなくともバーチャル世界だから大丈夫なのだろうが。彼女は腦の慣性は抗えないものだと、濾過装置の付いたストローを水辺に浸した。

辺りにはちらほら恐竜の姿もあったが、どれも大人しい草食の部類のものだった。故にすっかり安心してしまっており、彼女は暗い影が差すまで身の危険を感じられずにいた。


「え…」


顔を上げると、巨大な翼竜が口を開けている。間一髪、飛び退いて難を逃れたが後少し遅ければ文字通り口の中だった。距離は充分に取っており、縄張りを侵したつもりはない。ともすれば…

彼女はそこで初めて、レイの存在に意識が向いた。
近くにはいなかったが離れてもいない。


「ヒカル、早くそこから離れるんだ!」
「分かってる!でもレイが……ッ」


そこで、彼女は目を見開いた。見たこともない黒い異形の生物がレイの首を掴んでいる。姿形は人間にも似ているが、瞳孔の細い大きな金色の目は獰猛な猛禽類のようだった。
相手が手にしている巨大な刃がついた武器に声が出ない。次の瞬間、相手はこちらにそれを放り投げ、切っ先は彼女を目掛けていた。


「ヒカル!!」


アッケラ缶に名前を呼ばれて、体を伏せたのは無意識だった。刃は背後にいた巨大な翼竜の喉に突き刺さる。絶命した翼竜の群れが、翼を広げる。レイを抱えた黒い人影を敵と認識し、仲間達が襲いかかろうと羽ばたいた。


「レイ!!」


ヒカルは叫ぶ。手を伸ばすが、黒い影は彼女が身を起こす前に森の方角へ素早く消えた。
擦りむいた膝から少し血が出たが、それどころではない。拐われた、レイが。あの、よく分からない生き物に。


「アッケラ缶、今の追える!?」
「ヒカル、待つんだ!危険過ぎるよ!!」
「でもレイが連れて行かれたわ!!」


もつれる足を推して、彼女は影の消えた先を追い掛けた。狭くて追い掛けて来られない翼竜の咆哮を後ろにヒカルは走る。
ヘリのような羽音がする。彼女が木々の間に目を凝らすと、葉の合間を縫って飛ぶ見たこともない乗り物が見えた。
心臓が苦しいくらい脈打つ。あれが何なのか、何故レイはあの生き物に拐われたのか。何も理解出来ないまま、彼女は小さくなる機械音をただ必死に追い掛けた。
――――――――――――
2014 06 09

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