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Dinosaur Planet04


アッケラ缶がバーチャルシステム内を調べたものの、結局先程開いたタイムホールの正確な時間軸は分からなかった。加えて彼が予測していた以上にバーチャルを織り成す世界は膨大な情報量で全てのデータを処理しきれなかったとの事だ。
じっとしていても仕方ない。ヒカルはひとまず移動し、嵐の起こっていた辺りを目指した。

やがて拓けた海の近くまで歩いてきて彼女は浜辺の光景に愕然とする。波打ち際に打ち上げられた大量の恐竜の死骸。疫病や、恐竜同士の争いではない。それらにはどれも頭部がなく、彼女はその光景に言葉を失った。焼き切れてごっそり寸断された傷口。…間違いない。この、太古の世界に自分以外の"誰か"がいる。
ヒカルは恐怖で少し後ずさると、レイを連れて引き返した。


「アッケラ缶…一度、先に戻るわ。絶対、変よ。私も解析を手伝うわ。」
「ああ、その方がいいと思う。今からタイムホールを開くよ。…レイは何処か森の中に離してやるんだ。隠れる場所がたくさんある処にね。」


再び森の中に彼女は足早に戻っていく。そして静かな木立で立ち止まり、木の根の間にレイを降ろした。不安そうな顔をするレイの頭をヒカルはそっと撫でてやる。ごめんね、小さくそう呟いて彼女はち上がり距離を置いた。
置いて行きたくないが、事態は芳しくない。アッケラ缶がワープの起動準備を整え、発動の合図に声を上げた。


「アッケラーカーン!!」


現実に、それで戻れる筈だった。しかし彼女の体は未だバーチャルの世界に留まったまま。ヒカルが困惑して声を上げると、アッケラ缶本人も理由が解らず首を振った。


「…アッケラ缶、システム自体はちゃんと起動してるのよね?」
「うん。それは間違いないよ。でも…、ヒカルが入る時には無かった壁がバーチャルシステムとメディアタワーの間にあってデータの転送がうまくコントロール出来なくなってる。解除するのにかなり時間が掛りそうだ。」


後手後手になっている自分達にヒカルは頭を抱えた。単純な興味と、データ集めの為にここに来た筈がたった数時間の間にどんどんおかしな方へ進んでいる。
日差しが陰るのを見て、彼女は今夜身を休める場所を確保しなくてはと頭を切り替える事にした。
幸い天候も、気候も安定している。ヒカルは一度、ため息をついてレイに笑顔を向けた。


「…行こうか、レイ。もう少し一緒にいられるようになったから。」


戻れないならこの時代で出来る事をしなくては。
彼女はこの小さな命を元の場所へ戻す事を改めて心に決めたのだった。
―――――――――――
2014 06 02

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