「新入りにしては、面白いじゃん。ねぇマーモン」
「僕はそれを通り越して、怪しいと思うけどね」
「たしかにぃ。あいつ雨部隊だったよなぁ、スクアーロの部屋忍び込んで探してみっか」

ヴァリアー幹部のベルフェゴール、そしてマーモンは、彼女たちのやりとりを廊下で見ていた。もちろん本人達は気づいていない。そして2人とも彼女の態度や、表情に興味を持った。どうでも良い、そして妙に落ち着いた言動。

そして、知りたくなった。彼女、スプリーモのプロフィールを。

彼らは、足音も立てずにその場を去っていった。






スクアーロが任務で部屋を開けている間に、忍び込み彼の書斎やら引き出しなどを漁る。もちろん探しているものは新入りのスプリーモのプロフィール。幾度となく、部屋に忍び込んで色んなものを探して来たベルフェゴールだからこそ、探し当てるなど簡単なことであった。(今回は、スクアーロもわざと見つかりやすいところに置いてあったから何とも言えないが)







「こいつはたまげた」
「まさかパッショーネの幹部、だなんてね」


スプリーモ
父が交通事故を起こし、その際に請求された莫大な金額を払えず娘をパッショーネに引き渡す。
9歳でパッショーネに入団。軽々と血塗られた入団試験に合格。
すぐに暗殺チームに属し、数々の事件を引き起こす。
その後、暗殺チームが反逆行為を起こし当時幹部らと手を組みディアボロを失脚させる。
現在パッショーネの幹部。
ディアボロ同様、時を操るスタンドを所持。
スタンドは、先天的発現。スタンド能力は発展途上。
凶悪化した場合は、本体ごと殲滅することが好ましいと考えられる。
好きな食べ物は、アイスクリーム


スタンドという文字に丸がしてあり、スクアーロ自身が調べただろうメモ書きが施されている
スタンドとは、精神力の具現化、死ぬ気の炎と類似している
パッショーネの入団条件は、スタンド使いであること





「スタンド…使いとか、王子聞いたことねぇ!面白いじゃん」
「僕もだよ、ベル。でもさ、そろそろ」

マーモンは、扉に目配せする。足音は聞こえず、しかし気づいたときにはもう遅い



「うぉおおおい!お前ら勝手に、部屋を、あさって、るんじゃあ、ねええ」

スクアーロの大声が部屋に響き渡る。
ベルフェゴールも珍しく、スクアーロの気配に気がつかなかった。それほど、彼女の経歴を読むことに夢中になってしまっていた。ということだ。やっべ、とベルフェゴールはすぐさま読んでいた書類をスクアーロの机において間合いをとった。そのせいでスクアーロもベルフェゴールが持っている紙の存在に気がつき、何故か怒りを収めふっと笑った。今回は、それだけしか漁ってないからだろうか。スクアーロがあまり怒っていない。





「お前も新入りが妙なやつだと気がついたかぁ」

彼が激怒しなかった理由は、彼女が気になっていたから、ということだろうか。そして、自分のやってきたことを話し始める。スクアーロは、初めて接触したときから彼女に目をつけ気がついた上で回ってくる任務の中でも難易度の高いものばかりを彼女にまわした。周りは付いていけず、しかし彼女は毎回無傷に近い形で帰ってくる。
毎度のことに、おかしいと思ったことは確信に変わった。そこで、調べ上げたそうだ。しかし、調べても調べても出てこない。流石に何も出てこないためスクアーロは、ボスであるXANXUSに聞きにいった。そこで彼は、いつものように笑いながらウォッカの入った瓶とともにこの書類を投げたそうだ。

パッショーネとボンゴレの同盟のために、パッショーネの今までの汚名をはらすため彼女は身を挺した、と。





「そりゃ、無傷で帰ってくるはずだわ」

パッショーネの暗殺チームと言えば、此処数年で名を挙げている暗殺集団だ。彼らを一目でも見れば、殺される。しかも、死体は全て変死体。つい2年前の、ネアポリス周辺で起った列車内で起きた乗客全員が心臓マヒで死亡した事件は、国内全土を震撼させた。
こっちの世界で顔や名前は割れていない。しかし実力だけは、かなりのものだという噂が流れる暗殺チーム。彼女はその中でも有数の実力者、だったという訳だ。




「で、ボスはなんだって」

うちのボスも、ただで引き入れたわけでなはいだろう。そう思いスクアーロに問いかける。スクアーロもそれに気がついてボスに聞いたのだろう、彼はすぐに返事を返す


「あいつを、ヴァリアーに引き込め、とのことだぁ」
「パッショーネと一波乱起こす気ぃ?」
「さぁな、俺だってわかんねーよ。ただ言える事は9代目が絡んでるってことだぁ」
「まぁ、逆らおうとしても僕たちも、今罰を食らってる側だしね」

断る事なんてできないし、めんどくさいねとマーモンはスクアーロに向かって言う。ベルフェゴールはすっかり新入りに興味を持ってしまっていて、スクアーロは彼女の待遇に頭を抱えている。この情報は幹部だけに伝えられ、当然彼女はヴァリアー内で自分のことを言うはずもない。さっきの様子を見ると、彼女も自分から話すつもりも、ここで馴れ合う気もないらしい。そして、仲間意識というのもないに等しい。





「俺の隊に欲しいなぁ、いいだろスクアーロ作戦隊長」

ベルフェゴールのめんどくさい癖が出始めた。彼は一度だだをこねると、とことんめんどくさい。スクアーロは更に頭を抱えてしまった。


「あいつは、俺が監視するって決めてんだぁ」
「それは、メモに残していたスタンドが気になるのかい」

にやり、と笑った



「マーモン、おめぇでも知らねえんだろ。だったら、俺が直接彼奴から聞き出すまでだぁ」

それに、あいつの得意とする武器はダガーナイフだ。あの書類は、パッショーネのボス、ジョルノ・ジョヴァーナから受け取った資料だそうだ。パッショーネの幹部でありながら、凶悪化した場合殺せという文字があること。スクアーロはスタンドとかそういうこと以前に剣を扱う彼女にも興味を持ったそうだ。




「ふぅん。僕に頼み事があったら、お金さえくれれば手伝ってあげるよ」

じゃあ、僕はもう行くから。そういって部屋を出て行った。
アルコバレーノでさえ知らない、スタンド。そしてその能力者でないと入れないパッショーネ。
そしてヴァリアー同様の暗殺者集団。どれをとっても、彼女の存在に興味が湧かないわけでないはずだ。マーモンも例外ではなかった。今頃彼女は、何をしているのだろうか。幹部に情報が伝わった今、今までのようにはいかないだろう。



「殺すときは、俺が殺しちゃうよ、うしし」

ベルフェゴールは、そう言いながらマーモンを追いかけるように部屋を出て行った





「先に俺が殺してやらぁ」

ベルフェゴールには聞こえていないだろう。
パッショーネとどうなろうが、知った事ではない。
ボスの障害になるなら、殺すことだってやってのけてやる。柔なやつが幹部になれるほどこの世界は甘くない。それに彼女の目つきはやはり、どっぷりこちらに浸かっているからこそできる目つきで。ますます興味が湧いたようでスクアーロは書類を仕舞いながら、にやりと笑った。











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