「報告、ご苦労だったなぁ」
「いえ。失礼致します」


任務は、無事完了した。残党を一人残らず殲滅。
こっちの被害は、軽症者1名、重傷者2名、死亡者2名。
私以外が甚大な被害を負った。重傷の二人を車に運び込んで、ヴァリアー邸に戻ると彼らは、すぐさま集中治療室に運び込まれて、私はそれを遠目で見ながら部屋に戻った。
すぐさま報告書を書き上げ提出すると、隊長に、死んでしまった先輩の遺品整理を命令された。同じチームであったが故に彼らの部屋の遺品を片付けろ、ということらしい。私みたいな新人がやっていいことでもないだろう。もっと親しい人がやるべきだ、こういうことは。なんて思いながら彼の部屋を出て歩く。廊下を通ると、誰からも目も合わせてもらえなくなっていた。

私は知らなかったことだが、死んでしまった先輩達は幹部候補だったそうだ。人望も厚く、力も強い。きっと私を庇って死んだとか、そんな憶測が飛び交ったのだろう。そんなこと分からないんだけれども。どいつもこいつも、人間とはそういう生き物だ。





「あほらし、」

吐き捨てるように、人ごとを口に出してしまった。
あー…やっぱり、こういう仕事は私に合わない。





赤い絨毯が敷かれた廊下を歩き、私が使っている部屋よりも豪華な扉の付いている先輩の部屋に入ると、とても綺麗に整頓されていた。あらかた誰かが片付けをしていたのだろう。段ボールが数個あって、あと少しだけ入れ籠めば終わりだ。ふと、机を見ると写真立てが2つ。
一つは、綺麗な女の人と一緒に笑っている写真。
もう一つは、制服を着ていて家族と一緒に映っている写真。
写真の中の先輩は、笑顔だった。隣は彼女なのかなぁ。薬指にリングをつけていたくらいだし。あー、あと少し。持ってきた段ボールにあるもの入れて、少し部屋の掃除をすれば終わりかな、と写真立てごと段ボールに入れ込んだ。



カーテンを開けると、日の光が部屋に差し込む。
昨日のことが、嘘みたいに晴れていて。




あらかたつめ終わり、段ボール二つ分に収まった彼の私物はどうなるのだろうか。とりあえず、玄関の近くに置いて、お昼でも取ろうかな。なんて思い彼の部屋をあとにした。昨晩帰ってから、食欲が無い。帰って、お風呂に入って、報告書を書いて、遺品をつめて気がつけば夕方になっていた。
私は何故こんなにショックを受けているのだろうか。全然知らない初めて同じチームになった先輩達の死ごときで。
そう思っても心の中は、違う。私はショックを受けている。此処では、周りが死ぬことが日常化していて。いつも誰か消えては補充され、それが当たり前だって思われていて。誰かが死んでも悲しむ人は居なくて。
きっと、私が死んだらここの人たちはどうでもいい、で済ませるのだろう。ただ、私みたいなたくさんの人の命を奪ってきた人間が言える言葉ではないから、これ以上先は言うつもりもない。


この異様な雰囲気に呑まれてしまうようで。

やめよう、もう部屋に戻ろう。少し休もう。

私はスクアーロ作戦隊長に気を使われたようで、ここ3日は休暇をとれと、遺品整理のついでに言われたからだ。









「あーら、ごめんなさいねぇ」

ぼーっと歩いてると、肩がぶつかるように当たってしまい思わず意識を戻す。顔を上げれば、同じ部隊の少し早く入った女の先輩だった。彼女は、私に敵意を剥き出しにしていてわざとぶつかったことが、すぐに理解できた。


「いえ、すみません。」

私も、関わっているよりも早く寝たいという思いでいたので。さっさと謝って部屋に戻ろうと背を向けて歩こうとすると、彼女は追い打ちをかけるように言葉を投げる。



「あんた今回の任務、あんた以外全滅じゃないの。ねぇ、しってる?あんた、死神って言われているのよ」
「…そう、それでなに。」

彼女は、捲し立てるように話してくる。ターゲットは、綺麗に心臓をひとつき、もしくは首をはねる。気付けば、こんな殺し方しかできなくなっていた。ペッシが初めて暗殺チームに入ったとき、私のことを影で死神のようだ、と言っていたらしい。そりゃ私なんかペッシよりも年下で、顔ももっと幼くて、それでも人を殺している、それに加えて残虐的な死を、選んでいる。
リゾットはメタリカで刃を吐くようにして殺していたし、ホルマジオは小さく瓶詰めにして拷問を楽しんでいたし、ギアッチョは氷漬け。プロシュートは老化させ、イルーゾォは気を抜いたところで鏡から奇襲をかける。メローネは無害のやつも巻き込むようなやつだ。私も、暗殺チームに身を置いて麻痺してしまったのかもしれない。もっと、スタンドで効率よく殺すことだって出来るのに、どうして無駄な動力を使うんだろうか。異常と言えば、異常なんだと思う。でも、こっちに居る時間が長過ぎて、何が正常とかわかんないからなぁ。それに私の関わる任務は今のところ勝率100%。そして、私が無傷で生還するのも毎度のことで。チーム内では、誰かしら怪我を負ったりしていて。今回はほぼ全滅してしまったけれども。

そんな畏怖の念を込め、死神。
それが私のついたあだ名。
案外ヴァリアーの人たちはまともな思考回路なのかもしれない。




「知っているけど、だからどうしたの。なんか言ってほしいのかな」
「あんた、っほんと生意気ね」

めんどくさそうな顔をして、私は言ったのだ。だから、彼女は顔を真っ赤にして怒っている。まだ、入隊して3ヶ月。普通ならここに慣れるだけで精一杯だとか、右往左往して付いていくだけに精一杯とかそんな感じなのかな。でも、私は違うよ。そんな思いはとっくに消えてしまった。と



「あんたみたいな人間が、幹部候補になろうとか思ってんなら諦めな」
「…………、」
「あんたみたいなやつに付いていきたいって思う人間、此処には居ないわよ」

私だって、来たくてきているわけじゃあないんだけどなぁ。それに私は違うギャング集団の幹部で、別にそんな地位狙っていないよ、こんな言葉を呟いたら、ジョルノの顔に泥を塗る事になるから絶対言わないけれども。
でも、名を挙げて信頼を得なければいけないのだ。しかたがなくやっている面もあるのに、昇進してもだめだ、みたいな事を言われると少し手元を狂わしちゃうかもしれない。彼女が死んでも代わりは居るんでしょうから。なーんて。



「言いたいことは、それだけならもう行ってもいいよね」

結局思っていることなど、口にしない。めんどくさいやつに関わりたくない。
私、ヴァリアー邸であっけなく殺されちゃうのかな。まあ死ぬ気も殺す気もないんだけれども。彼女のきゃんきゃん騒いでいる声を無視して私は背を向けて歩いていった








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