雨部隊に移籍して、2週間がたった。
ここでは、常に入れ替わりが激しいということが分かった。気づけば私には後輩ができていて、私よりも地位が上な者はあと3人程度になってしまった。
私はいつものように、任務をこなし…いやこなしていない。現在進行形でもめ事を起こしている。この鬱葱とした森で。


「だから、俺はあいつがリーダーは納得がいかない」

雨部隊の先輩、名前は忘れた。
5人のチーム。4人の先輩に一番後輩の私
実力ならば、私が一番だということで指示書には私を小隊長にすることで伝達を受けたらしい。
ここで、気がついた。スクアーロ隊長は、多分私の情報を仕入れたのだ、ということを。でなければ、入って2週間のぺーぺーのぺーが、小隊長をやるはずがない。
しかしそんなこと、正直どうでもいい。何故私がリーダーなのが許せないのか。なんてとてもわかるし、私もどうでもいいし
でも、それを言ったら角がたつだろう。だかた口を閉じた。


「いいですよ、私あなたの指示に従います。報告書だけしっかり書けていれば」
「お前、俺のこと舐めてんの」
「あなたは実力があるのでしょう。私入ったばかりですから」

どうぞ、あなたがリーダーでも指示でもなんでもしてください。私は任務が遂行できれば構いません。なんて事を言ったためか、他のやつにお前が一番古株みたいだな、と嫌味を言われてしまった。
別になりたくなっているわけじゃあない。どうでもいいのだ、正直。任務の遂行さえできれば。背中を預けるわけでもないし、信用をしている訳でもない。別に先輩にかばってもらう必要も無い。




「さぁ、先輩。指示を」

どこかの残党を刈る仕事だ。厄介な事に彼らは、変な武器を持っているそうでその情報も不確かで。
ただ分かるのはここの地形だけ。でも私たちはこの地形が分かっているだけで、慣れている訳ではない
分が悪い、ただ、良いとすれば雨だということくらい。彼らは、匣というものを使って戦ったり、死ぬ気の炎というものを纏って戦うそだ。それが雨属性だから、雨の日は力が増すというもの。
私は属性を調べたところ、不明、だそうで。
勝手にまた、S,スクアーロに怪しまれた。

分かった事は、彼らが死ぬ気の炎を纏うと、スタンドが見えてしまうことだった。
結果から言おう。スタンドがばれた。ただ、スタンドとは言っていない。私が従える幽霊のようなものだと伝えたし、あとは適当にはぐらかした。
私生きる事に必死だったからさ、みたいな感じで。きっとここの諜報機関が一生懸命調べているのだろう。多分情報は錯綜すると思うけれども。



「地点C、お前はここで残党を刈れ」
「聞いているのか、」
「……。C地点に通ったものは見せしめを兼ねてやります」
「そこまで言っていない。話をちゃんと聞け、ボケ茄子」

以上、そういって私をのぞく4人は持ち場へ行った。去り際に、先輩達の視線に気づき、目を合わせようとしたら反らされた。









私はぼーっと、C地点から眺めていた。
私の場所、誰も来ない。おかしい100人程度の残党が居るはず。なのに来ない。





「くそ、はめられた」

気づいたときにはもう遅かったようだ。爆発音とともに、A地点から叫び声が聞こえる。
何が起きた、視界はあいにくの雨。見えない。しかし、B地点のやつも、誰もこない。こんな爆発音があったのに。嫌な予感がした

私はスタンドを発動させて、煙のあがる場所へ急ぐ。
木々の幹を蹴り上げ、瞬間移動を続けてたどり着けば、血のにおいと人間の焼けるにおい。

そして爆発跡の真ん中には先輩2人が、ひん死状態で戦っている姿だった。あんなに、自分がリーダーをやりたいと言っていた彼は、あえてこうなることを読んで自分の置き場をここにしたのだろうか。
ヴァリアーは、弱者を始末する。彼らの腕は、もう使えるものではないだろう。きっと、生き残っても…いい末路ではないだろう。
でも、今だけでも私たちはチームなのだ。チームを助けずに野たれ死ぬ姿など、私は見たくない。残党達は私の存在に気づいていない。だって、ここに誰一人としてこないのだから。











「マドンナ・ハング・アップ(引き止めろ)」

この言葉に気づいたのか、私に発砲する、瞬間だった。


時は止まる

この半径数十メートルの時間の流れを遅くする

雨さえも、止まって

私だけが動ける

静寂が広がる

そして、私の行動を終えマドンナで進める。
全て一瞬で終わるかのごとく静かに仕留め、相手は命を落とすのだ。
ただ、私自身の負荷も相当のものだし、生半可な覚悟でこれを発動すると数人不発してしまう。
しかし、今は違う。絶対に失敗しない。覚悟を持って私はスタンドを相棒に動く。片手のナイフで、木の幹を蹴り飛ばしながら一人一人の首をナイフがすり抜けていく。

切ったその瞬間は何も無かったように。







「解除」









ひん死の先輩達の横に戻ると、スタンドを解除する。その瞬間、敵が牡丹の花のように落ちる。そして私の手には残党のリーダーの首
それをひん死の先輩達の横に置く。
牡丹の花が落ちていく瞬間の様子を見る余裕なんてあるはずがなくて。






「先輩達、しっかりリーダーの首掴んだじゃあないですか」
「お前、が…や、…んだ、ろ」
「私は、先輩達の指示に従ったまでです」
「な、にいって…や、が、る」

仰向けになって血を吐きながら、雨空を見つめる先輩達を私は立ってみる事しかできなかった
彼らがもう、助かる事など、ないのだから。
見るだけで、分かった。もう助からない。体中穴だらけで、骨が見えちゃってて、でも無理に笑っていて。

雨が私たちの体温を奪う





「スプリーモ、今なら、おま、えのこ、と、わかるんだ」

気づけば、2人居たうちの一人の先輩は息を絶えたようだった。
安らかな顔をして目を閉じていた。
遺言とか、何も聞かないで死んじゃったな、なんて私は蚊帳の外の人間のようなことを思った。



「おま、えに、は、黄金の、……、し………み、と……よ」

無意識に、気づけば私は彼の体を抱えて必死に言葉に耳を傾けた。
ごぽり、と話す事に血を流して上の空で
血が雨に寄って流れていく。張り付いた服が気持ち悪い。でも、それよりも目の前の人がどんどん冷たくなっていく感覚がもっと、冷たい。



「聞こえなよ、先輩」

私の言葉は聞こえるのだろうか、彼はふと笑って動かしづらそうな手を上げて。
その手をしっかりと、握る。
彼の手を握れば、ゆ、び、わ、と声にならない声をあげた。

「先輩、まだわたし、先輩に習ってないよ、色々。ヴァリアーのこと、教えてよ。ねぇ」
「もう少し、大口たたいてよ」
「ねぇ、先輩」

名前も分からない先輩
ちゃんと聞いておけば良かった
こうなることは理解していた、わけない。こんなことになるなんて。誰かが死ぬって、こんなに悲しいことだったっけ
暗殺チームは、死なないっていうよくわからない自信があったから、だからかな
ソルベとジェラートが死んじゃった、
バラバラの死体を見つけたとき。
苦しい顔で死んでいる姿を見たとき。
すごく悲しかった。誰かが死なないように、誰も死なないように。私たちはやってきたから死なないでここまでやってこれたのかもしれない。

だから、人の死がこんなに身近で、残酷で。
ずっと、心の中にしまっていた感情が、溢れ出てしまったようだ





彼はまた笑って、目をつぶった。





血の流れた私の体でも冷たいのに、血が流れた先輩の体はもっと冷たかった。
綺麗に腕組みを施し、空を見上げると先輩2人が笑って青い炎を纏って空へあがっていく姿が、見えた気がした。


こつん、と頭に何かぶつかるような感覚がして地面をみる
腕を組んだときにはなかった指輪が先輩のお腹に置いてあって。




「…ゆび、わ」

先輩は私にこれを託したのだろうか。
これは、誰かにあげるものだったのだろうか。先輩の薬指にさしていたものだから、私がつけるなら親指でちょうどかなぁ。
親指に差し込むと、勝手に青色の炎が灯される。
ああ、青いのに、暖かくて。
マドンナ、ねえ。私ね、よくわかんないけど。やっぱり目の前の人が死ぬのが嫌だよ。
私はジョルノみたいにね、裏社会の浄化とかどうでもいいの。
私は、私の周りと幸せを勝ち取りたいだけ。彼らの死に誓ったの
ソルベとジェラートの死は、私たちの生き方を変えた。






こんなところでちんたらしてたらだめだ。
残党はまだ、居るはずだ。全員。全員、殲滅させなくては。切り替えろ私
ぶっ殺す、と思ったときには既に行動を終わらせなくてはいけない

さぁ、気配を探れ。覚悟を決めろ。



「覚悟が道を切り開く!」

青色の炎が私を包み込む。
ああ、体が軽い。マドンナの能力を使うと体の代償がでかくて動くのがしんどいのに、嘘みたいに軽くて







「ねぇ、マドンナ。」

わたしのスタンドは自立型ではない、話しかけても返事はない。だけど、今は静かすぎて。
胸の高ぶりを押さえきれなくて。
気配を探り、一人一人一瞬で切り落とす。

全員、逃がさない。
断末魔さえ聞こえずに、命が散っていった。











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