無事、入隊式を終えた。入隊式なんてあるんだ。やはり、ここは軍隊みたいな統括された暗殺部隊なのか。なんて思っていたらいきなり筆記試験。

まさか語学の試験があるなんて聞いていなかった。

ひさびさに、ひやひやした思いで文字を綴った、合ってるかわからないけれども、流石岸部露伴。本当に彼のお陰で助かった。普通に勉強していても、私はきっと無理だっただろう。ふと周りを見渡せば、やはり誰かを殺してきた目をしているやつらが多く、ギラギラした視線が私に擦る。粋がっている、そんな感じを受ける。いや、この新隊員たちの中で一番枯れているのは私なのだろう。こっち側にどっぷり浸かってもう、8年になるのだから。
彼らもきっとそんな顔をしているのも、今だけなんだろうなぁ。なんて少し失礼なこと思いながら私は顔半分をマスクで覆った。ここにくる前からリゾットに忠告されていた。同業者が居るかもしれない。なるべく素性は見せない方が良い、と。ドン・ボンゴレから見せてもらったヴァリアー在籍者の顔。その中には、私が任務をしているときに少しだけ見た事がある顔のやつも居るはずで、特にS.スクアーロ。こいつには何度も対象を奪われたことがあると思う。よくメローネやホルマジオに、女みたいに長い髪の野郎が居るときは必ず、対象を奪われるなんて言っていたくらいだ。用心した方がいい。きっと、彼らのビンゴブックには、私達の情報ももちろん入っているのだろうし。




新隊員達が集められ、これからの待遇であったり使える施設であったり部屋であったり、様々な説明があった。最初は3人部屋。地位が上がっていくごとに1人部屋に。そして広々とした部屋へ、最終的には幹部候補という段階をふむそうだ。そこまでにたどり着く人物なんて、精々2人が良いところかもしれない。任務はやはり、ヴァリアーというだけあって難易度の高いものが多そうだ。3人部屋は少しきつい。私は一人で寝たいし、同居人がきっと最初の任務で精神病んで、変な雰囲気の中眠りたくない。



「お手並み拝見、ってところかな」

声には一切出さないけれども。
そう思い、即行動に起こした。










「失礼致します」

あ、順番間違えた。
相手の返事を待たず、扉を開けて入ってしまった。
なんて言ってもあとの祭りなわけで。仕事が欲しければ、さっさと幹部にでもなんでも聞いて仕事を貰ったほうが手っ取り早いだろうと思い、迂闊な行動を起こしてしまった。そしてその行動の愚かさに今気がつく。




「…てめぇ、なんのようだぁ」

声の主は、作戦隊長。実質ヴァリアーNo,2のS.スクアーロだった。いきなりだった。間違えた。ここが、あの作戦隊長の部屋だと思って扉を開ければ、あれだけ気をつけたいと思っていた彼だった。あ、詰んだな私。唯一よかったと思うのは、マスクをしていたこと…くらい。



「本日入隊致しました、スプリーモと申します。単刀直入に申し上げますと、仕事をすぐまわしてもらえますか」
「まだ入隊したばかりのやつが何を粋がってやがる」

私はやけくそだった、だってノープランでここまで来たわけ…ではないがそれに近い状況で居るのだ。彼の言葉は正しい。私が逆の立場であればメローネの生け贄に捧げていたかもしれない。仕事あるよ、きみにぴったりのね。とか言ってメローネの部屋に連れて行く。ついでにメローネに追跡調査の任務を斡旋して渡すと思う。どうなるか、って?もちろん、ベイビーを作る同業者もびっくりなえげつない行動が繰り広げられてしまう。自問自答して自棄になっている私もその末路をたどるのだろうか、このS,スクアーロから。





「いやぁ、同室の子がうるさいもので。さっさと1人部屋になりたいなぁと思いまして」

まだ会っていないけれども。
多分女の子なのだろう。でも、面倒くさい。女ならなおさら。だって夜中とか朝とかに帰らなきゃいけないような任務だって女だからという理由でまわされるのだろう。マフィアの子供が通うような学校からすぐにヴァリアーに入隊したような子だったら、なおさら。絶対めんどくさい癖がある。断言する。ただ、そこらへんのチンピラからギャングに成り上がった奴も相当めんどくさい。撤回しよう。どちらにしろめんどくさいことこの上ないのだ。私は本来かなり神経質なのだ。あまり同室とか、相手を再起不能にしてしまうかもしれない。その考え故の言葉だった。






「生意気言ってんじゃあねぇぞ」
「実力主義の場所で、生意気も何もないじゃないですか。欲しいものは自分で手に入れる、裏社会ってそういうものじゃあないですか」
「…言うじゃねえか」
「お褒めに預かり光栄です」
「褒めてねえよ、でも気に入った。…………だったらこいつ、始末できたら考えてやってもいいぜぇ」

鍵のついた引き出しからファイルを出してしばらくページをめくり、4ページ目のところで手を止めた。
そうして、彼は私に一枚の写真を寄越す。受け渡された写真を見る。あ、こいつパッショーネ暗殺チームのビンゴブックで見たことがある。やっぱりターゲット結構被っているんだなぁ。と思っていると、他の情報が何一つないことが分かる。写真だけで、他の情報は何もない。




ああ、こいつ私に意地悪しているのだ。





彼は、試した目で私を見つめている。きっと、私の実力を見ようとしているのだろう。しかし、すぐに殺したら何故情報を掴めたとか、言うんだろうな…彼はにやり、と笑った。




「期限は3日だぁ。出来ないなら、さっきの話はなしだ」

そして、私の首もなしになるのだろう。つまらなく面倒くさいから、始末した。そう言えば合法なようなこと言いそうだ。もしも、このS,スクアーロの立場がリゾットだったら、彼もそれくらいやりそうだな。もしくは立ち悪く更にあいつらは跡をつけて監視する、イルーゾォあたりがやることになるのかな。しかし、私が9代目スカウト枠だということはヴァリアーの中で知れているはずではないだろうか…よくわからないが、私が上の立場の人から今まで何も言われていない。うーん…考えても仕方が無い。今は目の前のことを考えないと、気を抜けば死ぬからな。







「…了解です、3日以内にターゲットを始末。つきましては、なるべく自然を装う方がいいですか」
「好きにしろぉ。しかし、まぁ、てめぇにそこまで出来るか見物だぜぇ」
「(てめぇなめた言い方してっと、寝首かっ捌くぞ)3日以内に1人部屋、用意しておいてくださいね」


思わず口に出してしまいそうな暴言を押さえてふふ、と笑い彼女は写真をその場でライターで燃やした。慣れた手つきでその行動を行い、そして軽やかな足で出て行った。



「新入隊員がでかい口たたきやがってぇ」


しかし、そんな事を言っている彼は、やはり期待もしていたのだろう。殺気よりも、興味をもった目で見ていたのだから。そして3日後、彼女はしっかりとターゲットの首を引きずって机の上に置くことになる。







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