ジョルノの隣に座り、対面するのはドン・ボンゴレ。
その部屋には、ドン・ボンゴレの親衛隊。そしてジョルノを守る元護衛チーム、現親衛隊。
重苦しい空気が漂っていた。





「君が噂のスプリーモだね」

優しそうな顔のドン・ボンゴレの顔つきとは裏腹に、私は何か見透かされているような気持ちになっていた。
心の中すらも、彼には筒抜けなのかもしれない。何もかも知っていて、笑っているような。そんな気持ちにさせられてしまう。ジョルノも、そんな雰囲気に気づいているからこそ黄金の精神を背後に見せているのだろう。
なんでも見透かされるような気分にしてくる彼は、不思議な事にスタンドが見えないらしい。いや、ここに居る私たち以外、スタンドが見えていないと思われる。
ジョルノもずいぶんと大胆なことをしているな、でもこれは有利な情報である。スタンドが見えないなら、それはそれでやりやすいはず。






「よろしくお願い致します」

そんな堅苦しくしなくて構わないよ、なんて穏便な言葉を言ってくれるものの。
そんな社交辞令で、言葉を崩すと首が飛ぶのだろう。親衛隊達のぴりぴりした視線が私に突き刺さっているのだから無理に決まっている。あはは、と私も社交辞令宜しく笑う。
なんて、一人で空回りをしていると、この部屋に入りジョルノとドン・ボンゴレが話し合いをし私に書類を書かせたりした時間が長くて長くて。すっかり、違うところに意識が遠のいてしまっていた。




「彼女は、ボンゴレとパッショーネの架け橋になってくれるでしょう」
「そうであると、こっちも嬉しいよ」
「僕は、彼女を信じてます」

この言葉にドン・ボンゴレは、微笑んだ。
「だから、君がパッショーネの2代目になったんだね。分かる気がするよ。夢を大切にしなさい」そう告げられ、彼は部屋から出て行った。ドン・ボンゴレは多忙なようだ。
途中から、話を聞いておらずぼーっとしながら書類にサインをしたためか、改めて見るとボンゴレのマークが印刷されている部分に燃える烙印。不思議と熱くない。
ボンゴレから、正式に私を独立暗殺部隊に入隊させたようだった。
枠は、9代目のスカウト枠。しかしながらなんの優遇もなく、ただの下っ端であるが。部下たちにこのことが知られれば、内乱が起こりかねないという判断らしい。
だったら最初から同盟を結んで、はい、おわりでいいんじゃあないかな。そうもいかないのはわかって居るんだけども。
そんなこと思っていても私はお望みの通り、ヴァリアーに入ってしまったらしい。実感はもちろんない。しかし証拠に私の目の前には独立暗殺部隊ヴァリアーの制服が畳んで置いてあって、夢とか絵空事ではないことがわかる。そしてその横には分厚い書類があり、ぺらぺらとめくると数百枚にも及ぶメンバーの顔写真と出身地の情報が記載されていた。これ社外秘ものではないだろうか。何故私にこんな重要なものを渡すのか、信じられて居るのか舐められて居るのか、色々なことが錯綜する。







私は考えるのをやめた。私はこの量を覚えなければ、いけないのか。めんどくさい、幹部だけでいいや。

ぺらぺらとめくる手はゆっくりで。めんどくさいなぁと思わず漏らしそうになった。
ただ、思う事は私たち暗殺チームなんかよりも、よっぽど統括されて制約されて、まるで軍隊みたいな場所だと書類からひしひし伝わってくる。書類を読めば読むほど、青ざめる私にジョルノは肩をたたいて、ただ、大丈夫ですよと微笑んで頭を撫でた。

頭さえなでれば済む事じゃないぞ、と罪深いイタリアーノ達に伝えてあげたい。







「次会うときは、同盟の調印の時ですよ」

と言い、別れの挨拶をして彼らは出て行った。あまりにあっさりとしていて、それが逆によかったのではないかと思う。
扉の外で、ジョルノが彼女に優しくしてあげてくださいね。なんて言葉を言っていたから誰かが入ってくることは分かった。そうして、入れ替わりに入ってきたのは先程の書類の一番後ろにあった暗殺部隊のボスXANXUSだった。



部屋に入ってくる瞬間から空気が変わる。






「てめぇが、パッショーネだかなんだかの入隊希望者か」
「………………」

まじか。唖然とした。あ、よかった。今日の服。普通のスーツだ。いつもの服装をしていたら何か言われていたかもしれない。
私は、今までエキセントリックな人たちだって見てきた、つもりだ。慣れていた、はずだった。しかし、こいつ…この人は顔だけで、殺せそうなやつではないか。そう思うのは私だけでしょうか。本能が言っている。こいつだけには逆らうなと。
そんな風に思っていることに気がついたのがXANXUSは、フハッと少し変わった笑い声をあげた。そしてまっすぐと私を見つめる。真っ赤な瞳が私を品定めするような目で見て。





「せいぜい足掻いてみせろ」
「…言われなくても、そうするつもりです」

何故か怖じ気づいてしまっている私に、彼は鼻で笑って部屋からまた颯爽と出て行った。
嗚呼、神様私、リゾットがリーダーで本当に良かった。彼は確かに一見怖いが、とてもお茶目なやつだ。帽子とか帽子がシャンシャン…なんでもない。

一人取り残された部屋で、ただただ手を組むしかなかった。ちなみに私は、右手の親指が上になるから前世も女、らしい。






「逃げちゃだめだ、逃げても仕方が無い、やるしかない、やらねばやらない」

私は、今までの環境に感謝した。
ああ、これすっごい詰んだな。今まで畏まっていたけれども、既に限界だった。もうなるようにしかならないのかもしれない。入退条件は既に、クリアしているのだ。それに9代目スカウト枠という建前で入っているのだ。だれが何を言っても私はヴァリアーには入隊できている。
(SW財団に頼み込み、岸部露伴に私の記憶と引き換えに7カ国語が理解できるようにしてもらうというずるい方法で語学は習得した。しかし、そのせいで今週のピンクダークに私に似た生い立ちのキャラクターが出てきてしまったことは、もうしらない。ミスタやナランチャに茶化されたが、そんなのこの際どうでもいいッ)









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