いつものように、アジトに戻るとプロシュートとペッシが昼食を作っている最中だった。
プロシュートは、食にこだわりをもっているやつだ。だからこそ昼飯は自分たちで作る事が多いし、この光景も見慣れたものだ。料理の準備をしているプロシュート達を横目に、上着を脱ぎ冷蔵庫から炭酸水を取り出してソファに座って一息つく。



「スプリーモ、飯食うか」
「嬉しい!プロシュートの昼食を食べると午後も頑張ろうって気持ちになれるから大好き」
「そんなこと言っても、なにも出ないぞ」

そう言いながらも彼は、私だけにドルチェを用意してくれたり私の大好きなペスカトーレにしてくれたりと、言葉とは裏腹に私が喜ぶことをしてくれる。なんだかんだで、彼は昔から私に気をかけてくれて。とても優しい人だ。兄貴、と慕われるのも仕方が無いことだと思う。

普通と言えども、プロシュートの作ったものは、なんでも美味しいからなぁ。しばらくプロシュートの手料理が食べられなくなってしまうのか。残念。そう少しだけ、困った顔をしてしまった。そのことに彼が気づかないわけない。ペッシにフライパンを任せ、こっちへ向かってくる。




「どうしたバンビーナ、そんな顔をして」

流石イタリアーノ。さっと私の隣に座って肩を寄せる。自然と、こんな行為ができてしまって、更に見目も麗しい彼に私は心臓が毎回ばくばく言ってしまう。つい数年前は、そんなことなーんとも思っていなかったのにな。最近、この一連の行為には慣れない。これからも、そうだと思う。私もお年頃というやつなのかもしれない。しかし、こんな風にプロシュートの隣に座れるのも、最後かもしれないっていう思いも少しある分余計に、私もいつものような顔が出来なくて、俯いてしまう。だからプロシュートも直ぐに気づいてしまったんだろう





「私、多分来月から年単位の長期任務に出る」

長期任務と言っても、同じ国内のシチリア島だけども、このアジトにはしばらく戻ってこれないだろう。まさかボンゴレの交渉材料に私がなるなんてこと自体が突然のことだったから。ああ、この言葉を言ったら余計に悲しくなってしまってきた。




「いきなりだな、それでこんな顔をしているのかバンビーナ」

俺たちは、常に明日死ぬかもしれないような生活をしているだろう。と諭すように言い聞かせると同時に、慰めるように抱きしめてくれる。いつもの長期任務の時とは、違う。ということをこの少ない言葉数と私の行動で見抜いたのかもしれない。





「久しぶりにね、絶対に何が何でも失敗できない任務なの」
「お前からその言葉を聞いたのは久しぶりだな。潜入か、それに似たなにか、だな」


お前は、潜入任務が苦手だからな。これを知っているのは、暗殺チームだけ。もともと、私はボロが出やすい。ギアッチョほどではないが、キレやすいと思う。そうして暗殺チームに入ってから2年目かな、幾度目かの潜入任務中、見事にに失敗して拷問を受けた。まだ心身ともに幼かった私は、2ヶ月程度再起不能になってしまった。体は回復しても、心がそうもいかない。それを立ち直してくれたのは、暗殺チームのお陰だと思う。まぁ、それ以来何故か私には潜入任務を言い渡されなくなったのだが。いや暗殺チーム内で、私に回ってきた潜入任務を誰かが消化していたからかもしれない。私は元々、接近戦と援助を得意としている。スタンドの能力上、戦うときは肉弾戦で、でもそれは暗殺チームに背中を預けられるからであって…やっぱり、今回の任務は少しばかり気が重い。

拷問うんぬんがないにしろ、アウェイな空間に耐え尚かつ名を上げるように、パッショーネの品格を落とさないようにしなければいけないのだから。パッショーネの品格って、どんなことだろう。黄金の精神ってやつかな。ジョルノみたいな輝いた目とか…髪型とか…うーん、冗談でもジョルノの前で言うのはやめよう





「向き不向きがあったとしても、お前はやれば出来るやつだ。自信を持て」

抱かれていた肩をぽんぽん、と叩き自分のほうに引き寄せた。彼は私に欲しい言葉をくれる。そして何より、私に自信をつけてくれる。流石暗殺チームの兄貴。私よりも長く入っている分、そして幼い頃から私を見てきた彼だからこそ。私は彼の言葉で元気になれる。頭をなでられ「もうすぐ飯ができるぞ」とキッチンに戻っていった。







そうして、数分するとお皿に美味しそうなペンネアラビアータが盛りつけてあった。ペッシは「さぁさぁ、食ってくだせぇ」と私にフォークを渡してまたキッチンに戻っていった。ペッシは一番新しい新入りで、プロシュートが教育係りをしているためプロシュートの横には、常にプロシュートが居る。
プロシュートとペッシと一緒に食べるランチは、先程のジョルノに言い渡された任務のことをどうでもよくさせるくらい楽しい。わいわいがやがやと3人で、ペッシのこういうところを直した方がいいとか、そのうちホルマジオが戻ってきて私のペンネを横から華麗にすくい上げ食べ始める。盛り上がっているところでいつものようにメローネが「スプリーモ、今日もベリッシモ可愛いよ」なんて言いながら食べていることを物ともせず後ろから抱きしめてくるし。続いてギアッチョが「変な場所に糞バイクがあったせいで上手く駐車できなかったんだよぉお、てめぇええちったぁああ人のこと考えろよぉおい」とキレているわ。そんな騒動に鏡からイルーゾォが「うるせぇええええ」と言いながら様子を伺いに半身をのぞかせたり。




こんなに笑いながらランチをとる機会は、もうないかもしれない、とこの光景を目に焼き付けておこうと思う。きっと、私が少し変だってことにも気がついているのだろう。ギアッチョは、いつものように踏ん反り返って出て行かないし、煩いことが嫌いなイルーゾォも今日は出てきてソファに座った。
あー…やっぱり行きたくないな。なんて。













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