彼女が、初めてパッショーネに入ったのは父親が原因だと聞いていた。幹部のブチャラティと同時期に入ったそうだ。もう8年も昔のことだという。







「聞いてない、そんな話!なんで私なの」

目の前の彼女は、怒りだしスタンドを発現させる。僕に対して、だ。僕自身も多少怒られる、とは思っていたがまさかスタンドを向けてくるとは思っていなかったが。


「君だって、分かっているでしょう。今の現状を」




そう彼女は6年前から入団し、僕よりもパッショーネのことをよくわかっているだろう。麻薬ルートを潰した今、たしかにSPW財団ともつながりを持ち表社会にも影響を出せるほどになった。しかし、裏社会では麻薬ルートを潰した影響が出始めている。

規模も格段に大きくなり、縦のつながりが強くてもこの先、パッショーネを永続させるためには横の繋がりも作らなければいけない。
ディアボロを失脚させ、僕がパッショーネ2代目ボスになったことで、今までは中を立て直す事で精一杯だったけれども。そろそろ、外にも目を向けなければ難しいものもある。
そこで、同盟ファミリーや傘下を作ることで意見がまとまったのだ。彼女は、どう喚こうが分かっているのだ。しかたがない、しょうがない、やるしかない、いつもそんな言葉を言って困った顔をしてやってくれることを知っていて僕は頼んでいることを。







「そういわれたら、おしまいよ。ジョルノ。しかたがないから話だけでも聞くわ」

そうやって彼女は、スタンドを消しいつもの少し困った顔をして耳を傾けた。僕はそんな彼女につけ込んでいる自覚もある。彼女もギャングだ。分かってくれるはずだ。





「ボンゴレと、同盟を組もうと思っています」
「あのボンゴレ。結構なところに目を付けたのね」



僕たちはネアポリス周辺を島とする新生のギャング集団であり、対するボンゴレはシチリア島を牛耳るギャング会の大御所と言ってもいい。麻薬ルートを潰した今、他のギャング達がそこに目をつけていることを牽制したいという目の前の目的、そして裏社会を浄化するために規模を拡大したいという思惑からだった。そして一番の決めては、そろそろボンゴレのボスが代替わりするとの情報を掴んだからだ。

次期ボンゴレ10代目は、日本人。
そして僕と同い年。
そして何よりも、悪意を好まない。

僕の考える裏社会の浄化、という意思に異論を唱えることも少ないだろう、ということからだった。





「君だって、最近仕事をボンゴレに奪われちゃうってぼやいていたでしょう」
「目星はついていたけど…うん。ついていたよ。なんか現状読めてきたよ」

現在暗殺チームに属している彼女が、ついこのまえ対象が違うやり手の暗殺者達に奪われるという現状を報告していた。僕たちの抱えている暗殺チームは、かなりやり手の集団だ。暗殺のプロが揃っていると言っても過言ではないし、Sランク任務も難なく承諾し速やかに遂行するような。しかし、そんな彼らよりも先に対象を綺麗に奪われてしまうことがある。というと浮上してくるのはボンゴレの抱える独立暗殺舞台くらいのものだろう。
彼女はまた困った顔をしてため息をついた。
そして聞くのだ。






「もうそのドン・ボンゴレと話くらい、つけているんでしょう」
「スプリーモ、君は話が早くて助かります。実はもう、話は通してあります」



ただし、条件があるッ

パッショーネの内乱があったことは、あっち側に筒抜けだった。内乱が治まって、新生されたパッショーネには言っては悪いがまだ信用が少ない。「その信用を回復させる程のものを、私たちに見せてほしい。君の覚悟、見させてもらおう」そうドン・ボンゴレ通称9代目が僕に言った。

そこで僕は、ボンゴレにこちらも言い方が悪いが主戦力の人質を送り、そこで名を挙げられたら同盟を認めてほしいと言った。やはりその人質というのは、ボンゴレからすればパッショーネを代表することになる。候補は、幹部であるブチャラティや、フーゴ、リゾットやスプリーモが挙げられた。が、考えてみる。確かにブチャラティが行けば絶大な信頼をおけるし心配はないはずだ。

しかしブチャラティは、アメリカに長期任務中であるッ

フーゴはキレたらどうしようもない兵器になりかねないッ

リゾットが抜ければ暗殺チームの暴走を誰が止めるのか…

そう考えると一番まともで、年も近い彼女に頼めばいいのではないか。少しキレるとスラングばかり使ってしまう彼女ではあるが、あのディアボロと対等に渡り合う力量がある彼女なら、彼女自身の価値にも気がつくはずだ。僕達が覚悟を持っていることを。そして彼女もやり通してくれるはずだ。

だからこそ、僕は彼女を呼び出した。




「なら、入るところ独立暗殺部隊に近いところお願いね。私も暗殺部隊の現状を知っても良いでしょう」
「それくらいは、お易い御用です」
「決まりね。リゾットには伝えとくけど、他には適当に任務だって言っておくね。あとで詳しい書類、頂戴」

じゃあね、またあとで。そう言いながら彼女は部屋から出て行った。僕だって彼女のような人物をみすみす手放すようなことは、したくない。彼女の能力は、世界を揺るがすものだ。それに彼女が居なくなると暗殺チームのやつらがうるさいでしょうし…しかし、僕はどうしてもボンゴレの同盟を結びたい。この先、イタリアで活動を続けていくなら、きっとさけて通れない道でもあるだろう。
「スプリーモ、君ならやってくれると信じてますよ」と言ってみるものの、先ほど出て行った彼女には聞こえていないであろう。無駄なことだった、なんて思いながら僕は扉を開けて外に出しっぱなしのミスタに声をかけた。




「ミスタ、ボンゴレについての詳細をまとめておいてくださいね、4日程度でお願いします」
「ジョルノてめぇ、俺は4って数字が大嫌いなんだ。3日か5日にしてくれ」
「じゃあ明日でお願いしますね」


なんて、冗談くらい言ってもいいだろう。






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