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ここは浮世絵町にある『ぬら組』本家。
世間一般に言うとヤクザ若しくは極道一家。
近所の人々に言わせれば妖怪屋敷。
実際にどれも本当だから笑えない。
妖怪の極道─ヤクザであるぬら組と言ったところか。
奴良ツナヨシはそのぬら組二代目鯉伴の二人目の息子だ。
「で、それのどこがボクのせいって言うんだよ?」
「オレのせいでもないよね」
リクオとオレの前に口煩いカラス天狗から差し出された雑誌と携帯を見つめる。
「こっちの週刊誌には都市伝説。こっちは河童。
そして…インターネッツなるシロモノには『現代妖怪』の情報がズラ〜〜〜〜〜リ!」
「へぇ。見せてよ」
そう言って口煩いカラス天狗から雑誌を奪う。
そこには浮世絵町の妖怪の噂について様々なことが書かれている。
パラパラとめくって一つのページに目が止まる。
「うちの学校の旧校舎?」
なんだろうか?嫌な予感がする。
今夜にでも行ってみようかと考える。
「ちょっとツナも何か言ってよ!」
思案しているところでの呼びかけに顔を上げるとリクオがいた。
「どーしたの?」
「じーちゃんたちがまた妖怪の総大将を継げって。ボクはやりたくないのに」
「う〜ん。継いじゃえば」
「ちょっ!何てことを言うの。だったらツナが継いでよ」
「無理。オレはリクオと違って妖怪に変化してないし」
「んなっ………
だって…あの時は何が何だかわからなくなったんだもん!!
自分が何を言ったかもおぼえてないし!」
リクオとかカラス天狗とかがワーワー言ってるのを傍目で見て笑った。
「賑やかだなぁ」
思い出したのはだいぶ昔のこと。
その日のことは忘れられない。
前世でのオレの名は沢田綱吉。
イタリアンマフィアボンゴレのボスだった。
個性的な仲間たちと過ごした大切な記憶。
そして今はジャパニーズ妖怪マフィアの直系。
つくづくそういったものに縁があるようだと呆れた。
せめての救いは双子の兄がいたことか。
お陰でボンゴレデーチモになることを強要された時のように言われることはない。
それに、と思う。
空気が違う、と。
このオレの二つ目のファミリーであるぬら組には、その総大将にはリクオがいい。
もう本来ならないはずのブラッド・オブ・ボンゴレがそう囁く。
そして、オレは妖怪にはならないであろうことも。
妖怪の血は流れてるはずだけれど。
たぶん、身体の奥深く、魂には今でもボンゴレ初代の血が色強く流れてるのだろう。
それからもう一つ、ここはオレが前世で生きてきた世界から見て異世界だということ。
記憶を取り戻した始めは同じだと思っていた。
けれどだんだん違うと分かった。
分かってしまった。
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