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「いや、自分で飲み物は用意してるし」
「まぁまぁそんなこと言わずにさ、受け取ってくれよ」
いっそ、トンパをここでリタイヤさせれば他の受験者にとっても良いことかと考える。
ヒソカを沈めようとすればそれ以上の犠牲が起きようだろうが、トンパなら簡単にそれが出来る。
しかし、長年ハンター試験を受験しているということはそれだけ多くの人に顔を覚えられているということと同義であり、それを試験の始まる前から抑えてしまったなら目立ってしまう。
それは避けたい。
結局、簡単に蹴落とされるような人間ならばこのハンター試験には受からないだろうと判断する。
「それ、俺の好みじゃないし、欲しくなったらお願いするよ」
「そうか。じゃあお互いに頑張ろうぜ」
変に押し付けても意味がないと判断したのかトンパは心にもないことを口にして綱吉から離れた。
それに内心ほっとしながら着々と増えてきている受験生を眺める。
やはり、異様を放つのは44番のヒソカだ。
綱吉にとってヒソカとは今日が初対面であるが、トンパに話したとおり何処かで名を聞いたことがあったはずだ。
もやもやとした感覚を頼りに携帯のアドレス帳を一通り眺め、ヒソカは幻影旅団のメンバーの一人だと聞いたのだったと思い出す。
幻影旅団はA級犯罪者集団で、メンバーの体に刻まれる12本の足の蜘蛛を象徴としていて、目撃者の皆殺しを常とする盗賊だ。
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