混合短編 | ナノ




8

しばらく一人でぼーっと立っていると中年の男が綱吉に近寄ってきた。

その男は胡散臭い笑みを浮かべてトンパと名乗り、35回もハンター試験を受けているベテランだと宣った。

それだけ受けていて未だに合格出来ないのは実力がないからじゃないかと思ったが、それだけではない気がして男と会話を続ける。


「知りたいことがあったら何でも聞いてくれ」
「あ、じゃああの44番のヒソカってヤツ知ってる?」
「ああ、知ってるぜ。そういえばさっき一緒にいなかったか?…知り合いか?」
「違うよ。たまたま会場入りが一緒になってさ。なーんか危ない人だなって」
「なんか危ないってもんじゃない。実力ナンバーワンの癖に去年試験管を半殺しにして失格になったイカれた男だ」
「他にはなんか知らない?ヒソカってどっかで聞いた名前な気がしてさ。いつだろ?」
「いや、分からないな」


ふーんと相槌を打ちつつトンパを観察する。

嘘を着いている様子はない。

けれど、ただ暇潰しに話しかけてきたのではないだろうことは分かる。


「ああそうだ。これやるよ!お近づきになった印ってやつだ。受け取ってくれ」


瞬間、トンパの目的が分かった。

ハンター試験では受験者通しの落とし合いがあるものだと知り合いから聞いていた。

さりげなさを装って彼が取り出した缶ジュースには何らかの薬が仕込まれていると先祖譲りの鋭い勘が告げてきた。

そして、トンパが35回も受験しつつも合格していないのはおそらく受かることよりも他者を蹴落とすことに夢中になっているからだと悟る。



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