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つらつらとそんな恐ろしいことを頭に思い浮かべつつゆるゆると息を吐いた。
いつまでも立ち止まってはいられない。
例え嫌な予感がするとしても。
よしと小さく声に出して扉に向かって手を伸ばす。
しかし、指先が戸に触れるか否かの瞬間に綱吉はさっと後ろを振り向いた。
奇妙な男が綱吉をジッと観察している。
赤い髪を持ち頬には雫と星のマークが描かれて、その服装もどことなくサーカス団を連想させるようなそれだった。
ナッツが綱吉の後ろに回り、覗き込むように男を警戒する。
「ぴえろ…?」
「奇術師さ」
思わず口から溢れた言葉に男はその陽気な口調と裏腹に殺気を放った。
気持ち悪いネットリとしたネチッこいタチの悪い感触が体を絡み付くように包んでくる。
生来気弱な性格の綱吉は若干顔をしかめた。
「覚えておくよ」
「うん。それがいいな
」
途端に悪寒が霧散したけれど、ただ胸を撫で下ろすことは出来ない。
奇妙な服も向けられた殺気も些細なことにすぎない。
危険だ。
この男はとても危険だと思った。
「君も受けるのかい?」
定食屋の看板を見つつ投げ掛けられた質問はおそらくハンター試験のことを指している。
『君も』ということはこの男も受験者だということか。
隠すことでもないから頷き肯定する。
「そーだけど」
「ふーん。そっか
」
目を細め口の端をあげて男はクックッと楽しそうに笑う。
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