混合短編 | ナノ




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ザバン市ツバシ町のとある何処にでもありそうな定食屋の前で少年が一人立ち尽くしていた。

『めしどころ・ごはん』というその店は活気に溢れていて、いかにも庶民が行くような料理店だ。

ショルダーバッグを肩に掛けたその少年は黒い革製のジャケットを羽織り、ジャケットの中には27と書かれた服を着ていて、二重に巻かれたベルトには何本かのナイフが吊ってある。

そして右手の人差し指と薬指には青い宝石のついた一対の指輪をその手首には幾つか乳白色の玉が嵌められた銀の輪の連なるブレスレットを着けている。

重量に逆らう茶色の髪を持ち、琥珀色の瞳は幼さの抜けないあどけない顔立ちに甘さと優しさを見せていた。

その足下ではベージュ色の毛皮と橙色のタテガミを持つ猫のような仔ライオン、ナッツが主人同様に扉を眺めていた。

何も少年、沢田綱吉は定食屋に入ることに躊躇しているわけではない。

その先にあるものを思って足が止まっていた。


第287回ハンター試験、年に一度行われるプロハンターになるための試験だ。

『めしどころ・ごはん』はその会場への入り口である。

ハンターとは世界中の稀少な事物などを追求することに生涯をかける人々の総称だ。

はっきり言って、綱吉にハンターになりたいという気持ちはない。

それでもなお、綱吉がハンター試験を受けるのはハンターだけが持つことの出来るハンターライセンスが欲しいからだ。

それさえあれば各種交通機関のほとんどを無料で利用できたり、一般人立ち入り禁止区域の8割以上に立ち入りを許されたり、ハンター専用の情報サイトを利用できたりする。

それだけでなく、この世界においてハンター協会は国家を大きく上回る規模と信頼性を持っていて、国際的ライセンスとして国家資格かそれ以上の信用ある資格として広く認められているからライセンスを持っているだけで様々な物事において多大な信用を得ることができる。

だからこそ、綱吉はそれを目的のために手にいれたいと思っている。

最も、それほどの力を持つハンターに例え試験が困難を極め、毎年たくさんの死者を出しているとしてもなりたいと望む者は多く、ハンターになれるのは数百万分の一の難関と言われ、合格者が一人もいない年すらある。



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