混合短編 | ナノ




4

綱吉の額には炎が灯り瞳が橙色に染まる。

両手の手袋は赤を基調としたグローブへと変化し勢いよく吹き出た炎の推進力を利用し瞬時に間合いを詰め顔面に向かって右の拳を突き上げた。

綱吉には過去の記憶がないが、それまでに培ってきたのだろう知識はあった。

しかし、その知識はクルタ族の里で暮らすにはどうにもちぐはぐとした感覚があり、綱吉は今まで話が噛み合わない知識については意図的に或いは無意識的に口をつぐんできた。

その隠してきた知識の一つに死炎、死ぬ気の炎があった。

指輪を媒介に生命エネルギーの波動を高圧縮し顕現させて利用するその力をおそらく記憶があった頃の綱吉はよく使用していた。

指輪に刻まれる文字の意味は思い出せないものの、ライオンのような動物が象られている青い宝石の付いた指輪と27と書かれた手袋の使い方を綱吉は忘れていなかった。

この一ヶ月の間も使う機会こそなかったが、それでもその力を使った戦い方の訓練を繰り返し行なっていた。

始めは体の動かし方に違和感を感じていたがそれももうなく、記憶はなくとも知識や感覚として覚えていた技を扱える。

拳が団長の頬に入った途端に感じた殺気と重圧に炎を増やすことで応じ、もう一発左で打とうとしたが今度は阻まれた。

続け様に蹴りを放とうとしたところで予感に駆られ後ろに下がる。

綱吉には何が起こったか分からなかったが一瞬前にいた場所から団長も離脱していてそこには小さなクレーターが出来ていた。

顔につぎはぎの傷がある大男が第一関節で千切れている指先をクレーターに向けていた。


「念が使えたのか」
「念?」


訝しげに驚きを交えた団長の言葉を綱吉は反復した。

綱吉にとって聞き覚えのない言葉だ。

しかし、考える間もなく警報を鳴らした勘に従い見えない攻撃を避ける。

大男は自分に手を向けているだけに見えるのに、いったい如何なる攻撃をしているのかさっぱり綱吉には分からないがこのままでは埒が開かないとナッツと呼びかける。

瞬間現れた仔獅子に形態変化(カンビオ・フォルマ)モード防御と声に出さずに語りかけ、マント状に変化させた。




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