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里のみんなが集まる広場で逸る心を抑えて歩を緩めた。
既に襲撃犯達の姿は見えているし、彼らも綱吉に気づいていた。
襲撃犯達は男女入り乱れてのたった13人だった。
5メートルほど間を空けた場所で立ち止まり、口を開く。
「貴様らが皆を殺したのか?」
子供特有の甲高い声でありながらも怒りを抑える低さの混じった声音で分かりきったことへの確認の問いをかける。
綱吉の視界は13人全てを捉えていたが、その鋭い視線は彼らの中央、黒いファーの付いたコートを着る人物に向けられていた。
「お前は緋の瞳を持っていないな」
返されたのは尋ねたこととは全く違うことでありながらも、その答えを告げているのと代わりなかった。
つまらなそうにその言葉を発した男は、緋の瞳だったら今の瞬間にも綱吉を殺したのだろう。
綱吉がクルタ族でないことはその容姿からも一目瞭然で髪の色も瞳の色も顔立ちだってぜんぜん違う。
団長、コイツ殺すか?と何の気負いもない声音で刀を持った男がコートの男に尋ねた。
団長と呼ばれた男が答える前に綱吉は一歩前に踏み出す。
その両手には綱吉がクルタ族に拾われた当初から所持していた大きさの合わない手袋が嵌められている。
「なんで、こんな酷いことが出来るんだ!!」
怒りに任せてただ突撃しても彼らは倒せないことは理解出来ていても、隠しきれない怒気を含ませて怒鳴った綱吉に団長はフッと笑ってみせて、馬鹿にするような口調でさもそれが当然であるかのように自分勝手な言い分を言い放つ。
「緋の瞳が欲しいと思ったからな」
瞬間綱吉は地面を蹴っていた。
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