混合短編 | ナノ




2

今の綱吉にとってクルタ族は彼の全てだった。

気がついた時には森の中を一人さ迷い、その理由すら知らず、自分が何者かも分からず、どこへ向かえばよいのかも何もかもが分からなかった綱吉に手を差しのべてくれたのが今山の向こうで待っている少年だった。

正体不明の異端児と知りながら綱吉に優しくしてくれたのが里のみんなだった。

頭の中で鳴る警鐘はずっと危険だと告げているにもかかわらず、それでも里に戻る足を止める気にはならない。

僅かな希望だろうとすがりたく、それと同時に怒りが湧くのだ。

くだらない理由の為に彼らを殺そうとするのが許せない。

走って走ってようやく辿り着いた里は予想してしまった以上の惨劇が地獄絵図の如く死人に溢れていた。

地面の至るところに赤黒い液体が染み込み、倒れた人々の目はことごとく存在しない。

首から切断されたものや手足が引きちぎられたもの、押し潰されたもの、変な方向に折れているもの、様々だ。

それほど人口の多い里ではなかったためにそれら原形を残すものは全て見覚えのある顔をしていた。


「な、んで…こんな」


震える拳を強く握りしめ目を逸らすことすら許されない激動が唯一里の中で人の気配のする方向へと綱吉を駆り立てる。

おそらくもう襲撃者以外に生きている人間はいない。

クルタ族は何もただ隠れて過ごしているだけの部族ではなかったと知っている。

彼らは自分自身を、そして、仲間を守るために武装し日々鍛練を重ねていた。
けれど、それの甲斐がないほどに相手が強かったのだろう。

綱吉が戦って勝てる相手とは思えなくとも、そんな理屈では止まれない。




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