混合短編 | ナノ




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樹木やたくさんの草花が生い茂る樹海と言っても差し障りない山の中、人二人がようやく歩ける程度の道とも言えぬ道を子供が一人駆けている。

たった7歳くらいのまだまだ小さなその少年は木の根や石を器用に避けつつひたすらに必死で足を前へ前へを進ませる。

何がこんなにも自分を駆り立てるのか綱吉自身も分からないままに、ただただ記憶を無くし家族も分からない名前しか持たない自分を受け入れてくれた人々の住む里へ急げと何かが告げてくる。

後ろに流れてゆく景色に、その幼い姿にしてはとても速く前に進むスピードに疑問も違和感も持たずに動かしていた足を崖の一歩手前で止まらせる。

そして香ってきた僅かな異臭に眉をひそませた。

生臭い酸化した鉄のその匂いが血の匂いだと瞬時に理解してしまったからだ。

方向は目の前、木々に隠れてここからではまだ見ることのできない里で多くの人が死んだのだと、殺されたのだと悟った。

綱吉を助けてくれたクルタ族の目は緋の瞳と呼ばれ、その色は世界的にも最も美しい色の一つだと言われているらしい。

何か感情を大きく揺らすとその色に変わる瞳をそのままに殺すと死後も緋色が映えたまま保存することが出来てしまうために、それが高額がやり取りされてしまうために、たびたび彼らを獣でも追うように殺しにくる人が現れる。

その為に年に数回里ごと旅をしながら移住しているのだと聞いていた。

なんて酷い話だと思った。

それが今、里で起こっている。或いは、もう終わっている。

嘘を着いてでももう一人今里にいない、先程まで綱吉と共にいた少年を置いてきたのは正解だったとおそらくまだ襲撃犯のいるであろうそこを見て考える。

まだ生きている人がいるならば助けたい、それを行動理由に綱吉は迂回する時間を惜しみ、2、30メートルほどの高さのある崖から飛び降りる。

途中壁となる土を蹴って地面に着地した後は、里に向かって一直線に道でない場所に迷わず足を踏み入れ駆けた。




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