相反する立場 | ナノ




12

《side Detectiveboys》

コナンが光彦とランボと銀行のカウンターまで行くと推理通りの光景があった。

人質と人質に紛れ込んだと思われる犯人達が手と口を抑えられた上で床に座っている。

そして肝心のものを探しにカウンターを越えると、目だし帽とパーカーを着ている五人とジョディ先生と支配人と思わしき人がトランクの前に倒れていた。

近づくとデジタル表記の時計があり、残り二分ちょっとだと告げていた。


「ぎりぎりかな」
「急ぐぞ」


同じように覗いてきたランボの呟きに答えて、トランクの一つを持ちかかえる。

多少は乱暴にしても爆発しないはずだ。

元太とフランが台車を押して来た。


「おい、コナン」
「台車持ってきましたー」
「その上にコレを」


台車に積み終えると急いでエレベーターまで押して行く。

頼んだ通りにエレベーターの入り口を開けて待っている歩美にコナンは声をかける。


「歩美ちゃん、外に出てろ」
「うん」


そのまま台車ごとエレベーターの中に放置しその場から離れる。

耳を塞いで間もなく爆発音が聞こえて、大丈夫と踏んでいたとはいえギリギリ間に合ったことにホッとつつ、元太達の質問に答えてゆく。


「ふぃー。なんとか間に合ったな」
「すぐに爆発しなくてラッキーだったね」
「ラッキーじゃねぇよ」
「「「え」」」
「人質に成り済ますなら目と口を塞ぎ両手を後ろ手に縛らなけきゃならない。さっき叫んでいた奴は大声を出した後で口を使って両手を縛り、人質のところへ行き目と口を塞いだ後、手首を縛られた両腕の中に足を通して両手を後ろに持っていったんだろうからな。時間にある程度余裕がないとあせっちまう。三分くらいは余裕があると踏んでたよ」
「でも、なんで時限爆弾だったんでしょうか?リモコンなら都合のいい時に爆発させられるのに」
「リモコンなら両手を後ろ手に縛られていたらボタンを押した後遠くに投げられないだろ」
「なるほど」

爆弾を台車で押していった時とは反対にのんびりフロントまで戻る。

既に強盗犯のうち二人は気絶しているし、残り三人も自ら拘束を課していることを思えば気がらくだとコナンは思う。


「でもこの中からどうやって犯人を見つけるの?」
「簡単だよ。奴等の声を使ってこう言えば」


歩美の不安そうな疑問に自信たっぷりに答えて、蝶ネクタイ型変声機を口元に当てる。


「『よーし、次は全員立って俺の声のする方へゆっくりと歩いてきてもらおうか。いいか。ゆっくりとだぞ。前の奴にけっつまづくんじゃねぇぞ!』」
「おい、ちょっと」
「これでどうやって犯人を」


犯人の一人の声を使って人質に動くよう求めた。

元太や光彦は疑惑の声を上げるがすぐにそれが歓声に変わる。

コナンは三人だけ指示を無視して座ったままでいる男達の元へと向かった。


「あんたら三人だったんだね。計画にないことを指示されて動かないのは強盗犯本人達だけだからね。よーし。まずは銀行員さん達のガムテープを剥がして入り口を開けてもらってくれ」
「はい!」
「おう!」
「うん!」


これで一件落着だと仲間に声をかけて指示を出す。


「機動隊が中に入ったらこの三人と廊下で縛られている奴とトイレで伸びてる男を…」
「黙って」


急に肩をひかれ、口を押さえられる。

後ろに何歩かたたらを踏んだところで先ほどのピシャリと言い放たれた声からこの行為はランボによって起こされたのだと気付いた。

何をするんだと口は押さえられているため目で抗議しようとして、しかし、ランボの鋭い視線の向かう先が気になりそちらに目を向けた。

驚愕なんてものではない。

確かに今ここに自分がいるというのに、目の前にもう一人自分が、江戸川コナンがいた。

「ダーレが伸びてるってぇ?」
「「「コナン!?/君!?」」」


思わずコナンは自分の体を見る。

ちゃんとここにいる。

間違いなく自分はランボに口を抑えられたままここにいる。

だというのに何故だろう?

今イレに伸びていたハズの強盗犯の一人に、今、捕まっているのも“江戸川コナン”だ。


「あの外国人女といい、このガキといい、どうなってんだよ」
「おい!そこのガキ共!」
「うわあっ」


強盗犯が歩美達を脅かし声をあらげる。

この状況は何なのだろうか?

理解出来ない。

自分が二人いるということもそうだが、何より不思議なのは強盗犯も歩美も光彦も元太も捕まっていない“江戸川コナン”にもランボにも気づいていないことだ。

何故だと思ってもう少しだけ周囲を見ると冷めた目で、いや今日見た殆どの彼の表情である何の感情も移していないような顔で強盗犯を、そしてコナンかランボを見ているフランがいた。


「適当に合わせてほしいんだけど…って無理か。とにかく大人しくしてて欲しいんだもんね」


言いながら背後からコナンの顔を覗きこんだランボは途中で言葉を変えた。

だがこんな訳の分からない状況で何を合わせろと言うのだろうか?

いくら東の名探偵と名高い工藤新一である自分にだって分からない。

今コナン確信しているのは、この現象を引き起こしているのは自称マフィアであるランボとフランの仕業らしいということくらいだ。




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