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「はあ?テッメー沢田さんを疑ってるのかよ」
綱吉に話を聞こうと高木刑事が訊ねると獄寺がめちゃくちゃ怖い目付きで睨んで声低く吼える。
声を荒げているわけではないが、例えるなら怒気とか殺気とでも言うべき重圧を感じる。
そこらのヤクザとかよりも怖い。
目暮警部まで怯んでいる。
「いや、捜査に手を貸して欲しいんだが…」
「ああ゛」
「ってなに脅かしてんだよ。隼人」
「だってコイツラ、最後に大和大輝に会ったのが沢田さんだからとか言って、完っ璧、疑ってんじゃないですかっ!!」
山本が獄寺をなだめようとする。
「まーまー落ち着けって、な?警部さんたちだって仕事なんだしよ」
「野球馬鹿が!!それとこれとは話が別だろーが」
「オレは武の言う通りだと思うけどな」
さらりと綱吉が山本の言葉に同意すると獄寺は、なっ!?と声をあげる。
「っしかし!!沢田さん」
食い下がる獄寺に綱吉は諭すように言う。
「考えてみなよ。仮にオレが犯人だったとしてさ、証拠を残すと思う?」
…………。
………………。
「ああ、そうですね」
えっ?何だその納得?
「現行犯ならともかく証拠がなきゃ警察は動けないもんなー」
「そうそう。第一さ、こんな人の多い場所で敢えて殺すことないじゃん」
「ですね。よほどバレない自信でもあったんじゃないですか」
「パーティー客に紛れるってか?」
平然とそんなことを言う彼らはいたって楽しそうに談笑しているだけのように見える。
「あはは。案外そうかも。口裏合わせてくれる仲間いれば何とかなりそーだし?」
「防犯システムなんてものもやろうと思えばけっこう簡単に弄れちゃいそうですしね」
三人の話がだんだんと物騒になっていく。
「えっと、あのー」
「ん?どうしたのコナン君。そっか。今は警察の質問中だったね。んじゃ、おふざけはこれくらいにするか」
「今のって冗談だったの?」
「あったり前じゃん」
人が死んだというこの場面でふざけた?
いやいや落ち着け落ち着けとコナンは心の中で唱える。
「会場を出てた間に何をしていたかでしたっけ。そもそも俺らある人の代わりにこのパーティーに来てるんですよね。で、頼まれてた手紙を大和社長に渡してついでに世間話てきなことして、すぐにパーティー会場に戻りましたよ。あっ、その後はコナン君たちと一緒にいました」
「ある人とは」
「学校の先輩の雲雀恭弥さんです。家関係?らしくって」
聞き覚えがある気がしてコナンは聞き返した。
「雲雀?」
「そういえば親戚に警察関係者がいるとか言ってましたけど知ってます?」
気付いたのか高木刑事が手を打つ。
「まさかあの雲雀警視総監?」
「そうそう。たぶんその人です。凄いですよねー」
先程のやり取りを頭にひとつひとつ思い描く。
犯人は誰なのか?
そして、黒の組織は関わっているのか?
だとしたら誰だ?
正直今のところ一番怪しいのは沢田綱吉だ。
ところどころでさらりと俺も直ぐに気づけないほどに自然に話を逸らされた。
それが故意だったのか無意識だったのか、それは分からない。
彼は大和社長に会ったのは初めてだと言っていた。
なら殺す理由がないとは一概に言えないだろう。
拳銃なんてものを用意しているんだ。
計画的犯行には違いないだろう。
それに、知り合いに手紙を渡すよう頼まれてたというのもおかしい。
会社の創立記念パーティーなんだ。来ないならせめて祝電とかなんかを、というのは分かる。
だが、それで何で会うことになる?
手紙を送ってきた人ならそれこそたくさんいるだろう。
だというのに、何故大和社長は沢田と会った?
手紙の送り主と仲がいいとかか?
でも沢田本人曰くただの後輩だぞ。
何でだ?
それともう一つ。
『ふざけ』ていたと言ったあの会話、聞きようによっては警察を誘導しようとしていたのではないか?
殺人の行われた部屋をコナンは歩き回って証拠を探す。
入り口の扉に鍵はかかってなかったそうだ。
密室トリックなんてものはない。
あの時間帯やろうと思えば誰でもここに来れた。
ただパーティー客とかの中で死亡予測時刻に会場にいなかったのがあの五人というだけ。
一応今日この建物に来れたのは会社員と客だけとなっているが、黒の組織なら忍び込めたかもしれない。
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