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パーティーも中盤に入った頃、ふと違和感を感じて横を見ると灰原が俺に隠れるようにしていた。
「どうした?」
「奴らよ。彼らがいる」
その尋常ではない怯えっぷりに黒の組織のメンバーの気配を感じたのだろうと予想がつく。
けれど、慌てて周囲を見渡してみたけれど怪しげな人は見当たらなかった。
黒の組織はコナンになってしまった原因であること、元に戻り平和を取り戻したいこと、悪いことばかりしていて探偵の血が騒ぐことなどがコナンが彼らを追う理由。
元々そこの一員で逃げ出してしまったから見つかったら博士やコナンもろともに殺される危険がある灰原。
「灰原、お前はここから離れろ。いいな」
「嫌よ。貴方は残るんでしょ。いつまでも逃げてばかりは出来ないわ」
「でもよ」
見つかったらどうすんだとか危険だろとか言おうとした言葉は続けられなかった。
灰原は元々用意してたのか帽子を被る。
「これでいいでしょ」
真剣な目をした灰原が目に入る。
「ああ。わーったよ。ったく」
降参だ。
その後は何も得られないままに時間が過ぎた。
悲鳴があがるまでは。
コナンはパーティー会場から駆け出し悲鳴の聞こえた方へと向かう。
すると扉の開いた部屋を見つけて中に入る。
「どうした!何が……」
そこには顔を真っ青にした女性と頭に銃痕を残し真っ赤な血を流し倒れている男性、いや死体があった。
後ろから何人かの足音が聞こえる。
「これは」
状況をもっとよく判断しようと足を進めようとしたところで急に目の前が暗くなる。
誰かに目隠しをされた。
「えっ、え」
「駄目だよ。子供がこんなものを見てしまうのは」
「綱吉お兄ちゃん?」
「うん。コナン君、君はここから離れた方がいい。あの警察には?」
「あ、…まだ」
「沢田さん。今連絡入れました」
「サンキュー隼人。とりあえず外に出ましょうか」
綱吉は女性にも声をかけて部屋の外に出て扉を閉める。
その表情は険しい。
そこに毛利小五郎やそれから知らない数名の人が到着する。
「何があった?」
さっきまでお酒を飲んでいたことを感じさせない探偵の顔で小五郎が訊ねてきたのを女性が答える。
「しゃ社長が、中で…死んでたんです。たぶん殺されたのよ」
その言葉に顔を青ざめさせる人や驚きに染める人などに分かれた。
小五郎はハッとして中の状況を確認しようとして扉に手をかけた。
それを山本が止める。
「さっき獄寺が警察を呼んだ。今は入っちゃ駄目なのな」
「俺は探偵だ」
「知ってます。毛利小五郎さんですよね。でもそれは理由にならない」
(妙に冷静だな)
コナンは綱吉たちを見て不思議に思う。
彼らはまだ高校生だ。
コナンとかのように殺人事件によく遭遇しているなんてことはないだろうのに、死体それも明らかに殺されたと分かるようなものを見てああも取り乱さないとは、と。
「それで何でまたしても毛利君がいるのかね?」
「いやあ娘の友達にこのパーティーに招待されたんですよ」
「やはり君は疫病神じゃないだろうか」
何人もの警察官が現場検証をしているなか、目暮警部の皮肉に気づかないで小五郎はあっはっはと笑う。
コナン君もと付け加えられてコナンは苦笑する。
「警部いまのところ分かったことですが」
前置きをして高木刑事が話し出す。
「殺害されたのは大和コーポレーション社長である大和大輝48歳。額を拳銃で撃たれてほぼ即死。第一発見者は秘書の穂積由衣さん。社長がパーティー会場にも行かず部屋に籠っていることを不信に思い声をかけたとこ返事がなく中に入ったらこの状況だったそうです」
「因みに何のパーティーだったんだね?」
「創立記念だよ」
「ほう。それで容疑者は?」
「五人いますね。死亡時刻のころ殆んどの人は会場にいたことが確認されています。一人目は第一発見者の穂積由衣さん。副社長の中野太一さん。それから被害者の友人である加井修介さんと桜井優さん、そして最後に被害者と会ったとされるのが……高校生の沢田綱吉君です」
最後に出てきた名前に正直驚く。
高木刑事が言い澱んだのは未成年の少年だからだろう。
「綱吉お兄ちゃんが?」
「コナン君の知り合いかい?」
「パーティーで知り合ったんだ」
「これから彼らに話を聞きにいこうと思うのですが」
「ああ、そうしようか」
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