Gemelli | ナノ




3

思考とは無関係に言葉を紡ぐ。

嘘は言っていない。


「お爺ちゃんのお使いの帰りだったんですけど、急に嫌な予感がして、後ろを見たら、夜よりも真っ暗な何かがあって、びっくりして動けなくって、たぶん、それに吸い込まれて……って、そんな訳ないですよね。あまりに非現実過ぎます。たぶん、混乱して夢かなんかとごちゃごちゃに混ざってるんだと思うんです」


言葉を途切れ途切れ思い出すように告げてから慌てて否定する。

この男がただの一般人なら私の記憶が混乱しているだけだと思うだろう。

けれど、こんな“力”に満ちた場所にいる男だ。

何か心当たりがあるかもしれない。

わざわざ手当てしてくれるような人間のようだし、教えてくれると期待したい。


「黒っぽい何かに吸い込まれた、か。他に何か覚えていることはないのかい?」
「え、と、信じて下さるのですか?凄く凄く奥がないってくらいに深い闇。まるで渦のように引っ張り込まれた。そう感じました。何だったのでしょう?」


私の言葉に男は考え込む。

暫く待ってみたけれど男は残念そうに悲しそうに何かを堪えるように首を振った。


「悪いね。その真っ黒いものが何だか覚えがない。僕には君の力になれそうにないな」
「いえ、介抱して下さっただけで有り難いです。あの、もういくつか聞いても?」
「答えられることなら」
「ここはどこですか?」
「ブラッドフォードの近くだね。ウェストヨークシャー地方の」
「ヨークシャー?って、まさかイギリスの?」
「そうだけど」
「私、イタリアにいたのに……」


なんでイギリス?

あの黒いのにこんな場所まで連れて来られたか?

いやでもどうやって?



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