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この場まで私を連れてきた人物に訊ねればこの摩訶不思議な“力”が何なのかようやく答えが出るかもしれないと期待して、或いは、利用されそうになったら迷わず逃げ出そうと決意して、近づく人の気配を待った。
「良かった、目覚めたんだね。気分はどう?」
「大丈夫です」
なるべく気持ち悪いのを抑えて、英語で話しかけられたから英語で答える。
ここはイタリアじゃないのだろうか?
入ってきた人物は白髪混じりの鳶色の髪につぎはぎのあるローブを着た不思議な恰好の男性で顔に幾つか傷があった。
「あの、私はどうしてここにいるんでしょうか?」
気を失って目覚めたら見知らぬ場所にいたのだから、この質問に可笑しいところはないだろう。
不安そうに顔をしかめて訊ねれば、一瞬口ごもってから男性は口を開いた。
「君は森で倒れていたんだ。血まみれでね。驚いたよ。何があったんだい?」
「血まみれ?」
サッと体を見渡す。
怪我はない。
敵の返り血を浴びてしまったのだろう。
けれど怪我の覚えはある。
黒い渦に巻き込まれる前の爆弾の爆風を浴びた。
それは大した怪我ではなかったと思うけれど、それもなかった。
いやそれより、何だか体が小さくないだろうか?
「……よく覚えてなくて。確か、黒っぽい何かに襲われたんです」
体が小さくなると言えば、以前、今と十年後の自分を五分だけ入れ換えるという十年バズーカが故障したときに何かあったと聞いたことがあるけれど、あの場に、そしてこの場にもそれがあったとは思えない。
若返りするための道具を誰かが開発しようとしていたと言われても驚かないが、その手の研究をする者が私が襲撃したファミリーにいただなんて報告はなかった。
やはり、あの黒いもののせいだと考えるのが妥当だろう。
幻覚ではなかったと思う。
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