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『さあ?教える義理なんてないはずだけど。特に貴方達のような不審者相手にね。さっさとお帰り下さるかしら』
やはり、イタリア語が分からなかったらしい。
一人は困ったような表情をして、もう一人は顔をしかめた。
ここはイタリアだ。
そこに住む人がイタリア語を話すのなんて当然のことだというのに、その可能性を考えてなかったのだろうか。
だとしたら馬鹿としか言いようがない。
通訳を雇うなりなんなりあるだろうに。
いっそ蹴り出してしまおうかと考えた時、老人がポケットから何か──30センチ前後の木の棒──を取り出した。
それを見て私はこの世界に来てしまった最初に助けてくれた男性を思い浮かべた。
つまり、魔法使い。
瞬間私はハルバードを体の前で床にトンと付く。
ルビーを淡く光らせ二人組の足下から幻覚の薔薇の茨を生えさせた。
老人のと慌てて取りだそうとした男性の杖を奪い、手足を拘束する。
こういう現象に出会うのは初めてなのか、そうでなくとも抗う術を持たない二人は情けない呻きを上げた。
「まったく、油断も隙もないなあ魔法使いって奴は。これを使ってどうする気だったわけ?確か杖がなきゃ幾ら魔法使いと言えどただの一般人だよね。その程度でこの私を出し抜けるとでも?あ、もがけばもがくほど絞まるし棘が刺さるから注意してね」
奪った杖を片手にせせら笑う。
ご丁寧に言語を英語に切り替えて反応を待った。
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