いつまでも遊んでいたかった。
それでも……
《決意の心》
「お、ツナやっぱりここにいたか」
川原に寝そべっていた綱吉に黒髪の爽やか少年こと山本武は声をかける。
雨は止んだみたいで日がキラキラと光っている。
「…武か」
「小僧が外は危ないってさ」
言いながら武も傍に寄り寝っ転がってみる。
「平気だよ。ってか、濡れるぞ」
「いいって」
「京子ちゃんとかハルが洗濯するのになぁ」
「それを言うならツナも濡れてるのな」
「…そうだった」
「んで、どーしたんだ?小僧達がツナの様子が可笑しいっつってたぜ」
「うっ、やっぱり。ちょっと一人になりたかっただけなんだけど……」
綱吉はすっかり晴れた空をすっと見つめる。
「束の間の休息はもうすぐ終わるから」
綱吉の発言にはっとしたように一瞬武は顔を強ばらせた。
そして、直ぐにいつもの笑みを浮かべる。
「そっか。また大変なことになりそうなのな〜」
「それだけ?」
「ん?だってあれこれ考えたところでどーにもなんねーし。それにけっこー楽しいぜ」
「はは、そう言って貰えれば、ちょっとは気が楽だよ。ま、それだけじゃないんだけどね」
「そっか」
二人はそっとしばらく無言になる。
「そろそろ真面目に動こうか」
ようやくと言っていいくらいに時間が過ぎたあと、綱吉がポツリと断定的なのか疑問系なのか分からない言葉を放つ。
「おっ、いいぜ」
「えー即答するかな。結構重要なことだよ」
「だってツナは決めたんだろ」
「そうだけど……」
「なら俺らはついていくのな。第一さ、俺らのこの苦労の原因って白蘭のせいだろ。だったら迷う必要ねーのな」
予想外にあっさり返された了承の言葉に綱吉は杞憂だったかと苦笑する。
「本当はまだって思いたいんだけどね」
「そだな」
きっと自分達にとって、この『未来』での戦いがターニングポイントだった。
ここでのことがなければと何度思ったことだろう。
世界が巻き戻る前にあった出来事を知るのは自分達だけ。
それでも進むしかない。
世界には運命というものがある。
運命というのは当人達の預かり知らぬところで廻っている。
それは、時に何かを巻き込み犠牲にし残酷に不幸を呼ぶもの。
それは、時に何かを喜ばせ楽しませ慈悲深く幸福を呼び寄せるもの。
運命というのは当人達の意志を交わらせ巡っている。
さて、と綱吉と武は立ち上がり水や草を払う。
そして綱吉は宣言する。
「ここはちょっと時間軸やらが違うだけでオレ達の世界だ。久しぶりに暴れるぞ」
「おう!」
空は暖かな橙色と透き通った青色を見せていた。
[←] [→]
back