「これじゃ全く役に立たないんだ。どうにかならないかなぁ?……ねぇ、聞いてる?…ラピス?」
「ラピス?」
「……え?」
ロンに問いかけられても気が付かず、ハリーに目の前で手を振られて、漸く我に返ったラピス。
「貴女って、しっかりしているのによく物思いに耽っているわよね」
「ごめんなさい、何だったかしら」
「謝ることじゃないわ」
ハーマイオニーが笑う。
「だいたい杖が折れたのは自業自得よ」
「蒸し返すのはよしてくれ。このままじゃ魔法がまともに使えないよ」
庭に落ちている小石に向かって、ロンは「ウィンガーディアム・レビオーサ!」と正しい発音で唱えたが、杖からぱちぱち火花が飛んで、小石はぴくりとも動かなかった。
「大丈夫?何かあったの?」
「いいえ、何でもないわ」
心配するハリーに、ラピスは微笑む。
ぎこちない笑みになっていなければ良いのだけれど……。
あれから三日が経ったが、未だに彼等にチェイサーになったことを報告出来ていないのだ。
フレッド、ジョージとリー、アンジェリーナ、アリシアやケイティにも会ったのにも関わらず、誰にも言うことが出来ないままだ。
「良い天気ね」
ハーマイオニーが伸びをした。
「こんな日は箒で飛びたくなるよ」
ハリーが空を仰いで言った。
その言葉に、ラピスは微笑むことしか出来なかった。
「ロン、新しい杖を買ってもらったら?」
「そんなことを言えばまた吠えメールを送りつけられるさ。あれはもうごめんだね」
確かに、あれは凄まじかった。
大広間一杯に響くウィーズリー夫人の声は、大迫力だった。
ロンの隣に座っていたジニーも真っ赤な顔をして俯いていたのを覚えている。
「ジニーは元気?」
そう言えば、入学してから一度も顔を合わせていない。
「うん。友達も出来たみたいだし、楽しそうにやってるよ」
「そう、良かった」
彼女なら、直ぐに友達が出来るだろう。
「ラピスにすっかり懐いてるんだね。僕とは殆ど口を利いてくれないのに」
とハリー。
「ハリー、何もしていないわよね?」
「勿論してないよ」
「何故かしら……」
「顔も真っ赤になるんだ」
「……赤面症なのかしら」
うーん、と考えている二人を見て、ロンとハーマイオニーが顔を見合わせた。
prev / next
[ back ]