つながれた手
高校が共学で双子は同じクラス設定、晶馬にょた、オリキャラ注意
○つながれた手
冠葉視点
斜め前が晶馬の席である。いや、正確には斜め前の一つ机をはさんだ斜め前だ。くじ引きでこの席は決められた。今は、午後一つ目の修行が終わった休み時間。晶馬の席に一人のクラスメートが近寄る。彼女の名前はなんだったかな・・・・あぁ、そうだ田仲だ。田仲さんは晶馬とそこそこ仲のいい女子生徒で、家事しか取り柄のない晶馬と違って気が利くし、可愛いし、おしとやかだしと三拍子揃ったクラスのマドンナである。ただし俺は彼女に対して魅力を感じたことはない。完璧すぎる。付き合うならまだ晶馬の方がいい。二人の様子を眺めていると、晶馬がため息をついて苦笑した。耳をすませて会話を聞き取る。
「ね、ほら保健室へ行きましょう」
「ありがとう、田仲さんって本当に優しいね」
「そう?ありがとう」
ガタンと晶馬が席から立ち上がった。ふらっとよろける。
「大丈夫?」
「大丈夫、あはは・・・・思ったよりそうとうヤバイみたい」
田仲さんに支えられて、晶馬は教室をあとにした。
「何々、高倉妹具合悪いの?」
ぼーっとそれを見送っていたところに山下がくる。
「さあな、朝は普通だったけど」
「へー」
田仲さんは次の授業の開始ぎりぎりに戻ってきた。チャイムが鳴って授業が始まった直後、綺麗に折られた紙が回ってきた。
『晶馬ちゃん、大分具合が悪いみたいです。できたら次の休み時間に様子を見に行ってあげてください。田仲』
彼女の方を見るが、一生懸命に板書をしていたため目が合うことはなかった。おそらくノートの隣に置かれているルーズリーフは、晶馬に渡すためのものだろう。本当に気の利くいいやつだ。次の休み時間といっても、本日の授業は今ので終了だ。帰りの会なるものも10分ですむ。田蕗の「解散」という言葉を聞いてすぐ、晶馬の鞄をもって保健室へ。
「しつれいします」
「あら高倉くんいらっしゃい。高倉さーん、お兄さん来たわよ」
美人保健医が晶馬に声をかける。
「平気?帰れそう?」
「はい、大丈夫です」
声が全然大丈夫じゃない。少しよろけながらベッドをおりて、にへらと笑いながら俺の方に近づく。
「ごめんね兄貴・・・・じゃあ先生、しつれいしました」
ふらふらよたよた、覚束ない足取りで駅までの道を進む。晶馬の手はお腹にそえられていた。
「腹が痛いのか?」
「うん」
「おぶってやろうか?」
「いや・・・・それは、ちょっと・・・・」
ひくっ、顔がひきつった。おぶられるのは嫌らしい。だけども、足に力が入っていないため、晶馬はいまにも倒れそうだった。
「恥ずかしがってるのか?無理するな、よろよろじゃないか」
「で、でも大丈夫だから」
「大丈夫じゃないだろう」
「いいの、歩ける!」
かたくなにおんぶを嫌がる。何だ、何がいやなんだ。
「もしかしてお前・・・・生理か」
「ば、ばか!」
ビンゴ。そういえば晶馬は生理痛が薬を飲まなければならないくらいにひどいのであった。
「薬は?」
「無くなってた」
「・・・・辛いか?」
「大丈夫・・・・だと、思う」
「ダメなんだな。仕方ないな、手つなぐぞ」
「え?」
おんぶがいやならば手をつなぐしか方法がない。晶馬が嫌がる前に手を握って引いた。照れている様子であったが関係ないな。手をつないで歩くなんて一体何年ぶりか。後ろから小さく聞こえた「ありがとう」という晶馬の声に、頬がゆるんだ。
おわる
締めがしまらない。
2011.11/10
[ 19/19 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]