ある少女の話

本編が全て平和的に解決した、と言う仮定が前提

恋、それは誰かを愛すること。愛、それは誰かに恋をすること。その誰かが、異性じゃないといけないなんて、誰が決めたと言うのだ。神様にだって邪魔させない。好きになったらそれが全てだ。

○ある少女の話

荻野目苹果は恋をした。家族を救うため、姉になろうと抗う中に見つけた運命の相手。彼女がどんなに素っ気なく突き放しても、乱暴をはたらいても、相手は苹果のことを気づかってくれていた。ある時、相手が苹果を庇って交通事故にあってしまう。「自分のせいだ」と、自責の念にかられる苹果を責めずに、相手は彼女を案じた。

「怪我はない?そう、よかった」

そんな相手の笑顔に、荻野目苹果は恋をした。

「いくわよ苹果、絶対あの人を手に入れるのよ。デスティニー!」

グッと拳を突き上げて叫ぶ。ちなみにここは、櫻花御苑高校の校門前である。実は苹果は、その相手と待ち合わせをしていた。相手は料理が上手い。だからそれを教えてもらうという口実で約束を取り付けたのだ。最初、相手の高校まで私が迎えにいくと苹果は言ったが、うまく丸め込まれて、相手が逆に迎えに来てくれることになったのだ。

「荻野目さん!ごめん、もしかして待たせちゃった?」

相手が来た。彼女の名前は高倉晶馬。青みがかったふわりとした髪に、まんまるい翠の瞳を持った美少女である。彼女?苹果は女の子なのに恋した相手が彼女?そう、苹果は同性に恋をしたのだ。真実の愛は性別を超越する。とは、苹果がクラスの友人たちに言った言葉だ。

「ううん、ついさっき出てきたの。ありがとう晶馬ちゃん、さぁ行きましょう」

さりげなく手をとる。女の子同士だからこそ、簡単にできるボディタッチだ。

「何を作りたい?」
「そうね、肉じゃがとかかしら」
「肉じゃがならだいたいカレーといっしょだから、きっと荻野目さん、すぐおいしいのつくれるよ」

人参と玉ねぎは家にあったから、糸こんにゃくとじゃがいもとお肉をスーパーに買いにいこう。相手が苹果に微笑みかける。

「うん」
「ところで、荻野目さん家って肉じゃがのお肉は牛肉派?豚肉派?家によって違うみたいなんだよね」
「お肉か、家はね・・・・」

話しながら少しずつ距離を縮める。相手は鈍感なので気がない。

「ねぇ晶馬ちゃん」
「何?」
「晶馬ちゃんは、誰か好きな人・・・・いる?」

自分より、少しだけ高い位置にある顔を見上げる。目を大きく見開き、赤くなって焦る相手は可愛い。

「す、好きな人?もう・・・・荻野目さんまで兄貴みたいに『恋くらいしろ』とか言うつもり?」
「そうじゃないわ。女の子だもん。晶馬ちゃんと恋バナしたいだけ」
「恋バナ、か」
「で、いないの?」
「いないよ。今は冠葉と陽毬がいれば・・・・いや、冠葉と陽毬と、荻野目さんと学校の友達がいれば僕には充分だ」

苹果の気持ちに気がついていないハズなのに、天然で苹果を喜ばせるような事を言う。

「荻野目さんは?」
「私?」
「うん、僕が言ったんだから荻野目さんも教えてよ」

苹果の気持ちに、全く気がついていない鈍感。きっと彼女は、苹果が自分を好きだなんて1ミリも思っていないのだろう。

「いるよ、好きな人」
「いるの!?」

ここで貴女が好きです、なんて言ったらどんな反応をするかしら。苹果は心中で笑っていた。困るかな、それとも照れるかな。でもきっと冗談だと思われてしまうだろうな。だけど、どの反応も見てみたい。好きな人の全てを知りたい、そう思っていた。だけれども・・・・

「誰かは教えないわよ。そうね、晶馬ちゃんに好きな人ができたときに教えてあげる」

今は気持ちをそっとしまって、ただただ隣にいよう。それに、告白は相手からさせるつもりであった。

「僕に好きな人か・・・・当分無理かも・・・・」
「よく見て。近くにいい人がいるでしょ?」

苹果は、つないだ手を引っ張った。

おわる

ただの雰囲気小説になってしまいました(苦笑)
ピンドラの世界観なら、晶馬が女の子でも、苹果との関係は成り立つ気が・・・・成り立たないか。
もちろん、男の子のままの方が面白いし、しっくり来ますけど(^^)


2011.10/26

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