兄弟の役割

微妙に冠晶

○兄弟の役割

晶馬視点

幽霊はいるのかいないのか、この問題については古今東西、様々な議論がなされてきた。主に激しく衝突を繰り返しているのは、次の二種類の人々である。まず、非現実的な事柄、つまり科学で証明できないものは認めないという学者気質の人。そして、この世に科学なんかでは証明できないような、神々しい、もしくは神秘に満ち溢れた力が存在すると固く信じて疑わない人。ちなみに僕たち兄弟は、おそらくそのどちらでもない。

「はぁ?絶対見間違いだ。幽霊なんかいるわけねえだろ」
「いたよ!だってさっき白いのが・・・・!」

ここは寝室、僕と兄貴の部屋。陽毬はいい子に寝ているので、あまり大きな声は出せないが・・・・現在、夜中の2時にもかかわらず、些細なことで口論をしている最中である。

「目の錯覚ってやつだろ?」
「そうかなぁ・・・・でも動いてたんだよ」
「目を動かしたからじゃねぇの?」
「目はずっと真っ直ぐ天井だけを見てたし、その白いの、ぐるぐる回ってたんだ。視界の端で見てたから間違いないよ」
「ぐるぐる?」

そう、ぐるぐると天井の端から端を旋回する白い影があったのだ。間違いなく僕はそれを見た。普通ならそんな現象ありえないだろう。だから絶対アレは幽霊だ。

「1号か2号が飛んだとか・・・・」
「え・・・・」
「あいつらはペンギンだけど普通のペンギンじゃないしな。頑張ったら飛べるかもしれないだろ。お前は、その腹の白い部分を見たんだ」
「それを言うなら、あいつらみたいな訳のわからない存在が身近にいるんだから、幽霊だっているかもしれないじゃん」
「いやいない、絶対いない」
「何でだよー」

ペンギン(デフォルメだけど)が空を飛ぶかもとか、科学と相反することは普通に言う。それなのに、頑なに幽霊を否定するなんて。

「冠葉って怖いもの苦手だったけ?」

僕の記憶では、ホラー系ミステリードラマをテレビで見ているとき、冠葉は隣で怖がる僕と陽毬を安心させようと手を握っていてくれていたはずだ。「怖くない、大丈夫だ」と頼もしく笑っていたと思うのだが・・・・もしかして、あの時一番ビビっていたのは冠葉だったのだろうか。怖くない振りをして、僕たちの手を握り必死に恐怖をまぎらわせようとしていたのかも。・・・・いやまさかな、だってすごく頼もしかったんだ。冠葉が幽霊怖いとかないな。そう思った直後・・・・

「はっ!ゆゆゆ幽霊が怖いのはお前の方だろうが!」
「声がでかい陽毬が起きる。あと説得力ないよ。声すごい震えてるじゃん」

あれ?

「うるせー。別に震えてねぇしっ。ほ、ほらもう寝るぞ」

ガバッと毛布を頭まで被り、冠葉は訝しげな僕の目線から逃れた。

「・・・・」
「・・・・」
「むかぁしむかぁし、あるところに、この世に未練を残したまま死んだ落武者の霊が・・・・」
「だぁぁああやめろ!」
「んむ!」

飛び起きた冠葉に口を塞がれた。これ以上何も言うな、とばかりの目で訴えてくる。息が荒い。あぁ、怖いものは嫌いか。だけど僕と陽毬には知られたくなかった、陽毬に言ったら殴る、とでも言いたいんだな。冠葉は、陽毬や僕に対して、お兄ちゃんでいようとカッコつける。僕も陽毬に対してはお兄ちゃんでいたいし、冠葉の弟というポジションがあまりにも居心地がいいので甘んじていたりするけど・・・・怖いなら怖いって言ってくれたほうがいいなぁ。だって誕生順に兄や弟という区別はあれど、同じ日に生まれた双子なんだ。

「・・・・っ」

・・・・仕方ないな。兄貴のために、弟としてのつとめを果たそう。口を覆っていた手を掴んで外し、そのまま握った。

「あー、またさっきの白いのとか見たら怖いし、兄貴の布団でいっしょに寝てもいいかなぁ?」

握る手に力をこめて、少し俯き気味に下から目線を意識する。

「・・・・」
「ね、お願い」

どうだ。

「し、仕方ねぇな。わかったよ」
「ありがとう」

これで冠葉の自尊心を損なわずに、僕たちのどちらも怖くて眠れない事態にならない。さすが僕、いい弟だよね。と、考えながら冠葉の布団に潜り込む。背中合わせになった方が良いかな、そう思って体の向きを変えようとしたら、冠葉の腕がそれを許さなかった。ぎゅうっと抱きしめられて、鼻が冠葉の胸に当たる。頭の上からリップ音がした。

「か、かんば・・・・?」
「ありがとな。おやすみ晶馬」
「えっ、あ・・・・おやすみ」

うわぁ、顔が熱い。

おわる

落ちが弱いorz

2011.10/24

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