不思議な世界・前

キャラ崩壊ハンパないです

授業中、ふと空を見上げると、渡り鳥が『く』の字になって飛んでいた。雲が動いている。ゆったりとした風に、押されて流れる雲の合間は青い空。ハッとするほどキレイな青だ。先生の声が遠い。閉じられた窓の向こう側から、色んな音が聞こえてくるような気がした。風の吹く音、鳥の鳴く声、虫の羽ばたき・・・・あぁ、なんだか目蓋が重いなぁ。

〈暗転〉

気がつくと、私は森のなかを歩いていた。隣には政宗様、前には兼続さんと慶次さんがいる。

「すまない“ヘンゼル”、それに“グレーテル”・・・・どうかこの不甲斐ない両親を許しておくれ」
「は?」

兼続さんが震える声でそう言った。いったい何の話だろう。

「いや、許さなくていい。思いっきり恨んでもいい。いっそ生きて私たちを殺しに来てくれれば本望だ」

肩が震えている。その肩を慶次さんが抱いた。

「泣いているのですか?」

私の声が静かな森に吸い込まれる。

「私に泣く資格などない。あぁ優しい“グレーテル”よ、すまない、本当にすまない」

グレーテル?それは私のことなのだろうか。それに先程から何を謝っているのだろう。いまいち状況が理解できていない。

「ふん、いつまでもめそめそと謝られても鬱陶しいだけじゃ。いい加減泣き止まぬか」

むすっとした顔のまま、政宗様がそうのたまった。言い方は刺々しいが、兼続さんに対して気を使っているのがわかる。

「だいたい、わしも“グレーテル”も同意の上なのだからよかろう」
「“ヘンゼル”・・・・」

先程から繰り返される『ヘンゼル』と『グレーテル』。もしかしてここは、【ヘンゼルとグレーテル】の世界なのだろうか・・・・!?


○不思議な世界


あれから更に30分ほど歩いた所に湖があった。兼続さんたちは、小さなバスケットを一つ置いて元の道を戻る。バスケットの中には、パンが二つ入っているだけだった。

「おいグレーテル」

バスケットを覗いていると政宗様に呼ばれた。間違いない。この世界での私はグレーテルで、政宗様がヘンゼル。兼続さんと慶次さんが母上と父上なのだ。グレーテルと呼ばれている以上、私もヘンゼルと呼ぶべきなのか。たしかヘンゼルはグレーテルの兄上にあたる。

「はい、ヘンゼル兄さん」
「ここは湿っぽい。そのパンがカビる前に食べてしまおう」

呼び方は問題ないようだ。

「よろしいのですか?」
「腹が空いていては狩りもできないからな」
「狩り・・・・」
「もう二回ほど、捨てられては戻るを繰り返して来たが、さすがにここからは帰れまい。家からずいぶん離れている。道標も落としてこなかったしな」

道標を落としながら、もう二度も捨てられていたのか。政宗様は、家に帰ることを諦め、この森で生きていくつもりなのだろう。

「あれ以上母さんを泣かせたくなくて、自分たちから言い出したことでもあるしな」
「そう、でしたね」

先ほどの同意の上、とはそういうことであったのか。とひどく納得した。ここに至るまでの経緯は読めた。たしか、ヘンゼルとグレーテルは貧困が原因で両親に捨てられる。おそらく、政宗様と私はパンや石とは違う道標を落として帰ることができたのだ。しかし、私たちが無事に帰ったことで兼続さんこと母上と慶次さんこと父上を悲しませた。だから、話し合いか何かで捨てられることを了承した。きっとそういうことなのだろう。

「この森にはウサギがいたな」
「・・・・」
「あとは木の実を採って、熊に気をつけていれば問題なかろう」

食事を終え、政宗様が立ち上がる。

「この湖の向こう岸へ行くぞ。風に乗って食い物の匂いがしておる」
「ですが、この湖は大きいですよ」

向こう岸へ渡るにはずーっと向こうにある湖の端を見つけなければならない。

「ならば私がお前たちを運んでやろう」

はっと声をした方へ目を向けると、背中に白い翼が生えた三成さんが、湖の上に立っていた。

「み、三成さん?水の上に立って・・・・えぇ!?」


つづく


2011.10/28

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