敏腕マネージャー
鉢竹
○敏腕マネージャー
今日はバレー部の大会。会場は室内であるが侮ってはいけない。むしろ風が窓からしか入ってこない分、外よりも熱がこもって危険だ。大量の水と清涼飲料水、清潔なタオル、制汗剤、うちわと扇子、氷をつめたクーラーボックス、それからおにぎり。マネージャーは大変である。
「いや三郎、お前はマネージャーじゃないだろ」
大会会場でせっせと持参した荷物をほどいていたら、背後から八左ヱ門のつっこみが入った。
「マネージャーのいない可哀想なバレー部を、支援してやろうと言う恋人の優しさがわからんのか」
「余計なお世話で「ほら冷やしたタオルだ。首にあてとけ」
「あ、ありがとう」
もちろん、八左ヱ門だけではなく、八左ヱ門が世話になってる先輩や同級生、可愛がってる後輩の面倒もみてやる。我ながら八左ヱ門にはもったいないくらいできた男だと思う。
「七松先輩、おにぎり食べますか?」
「一つ貰おう!」
「滝夜叉丸、お前には制汗剤をまるまる一本渡しておく」
「いつもすみません先輩。この美しい私が汗くさかったら先輩も嫌ですよね」
「嫌ですね」
「あぁ、でもこの私の汗は汗でもフローラルな薫りが、ぐだぐだぐだぐだ」
それぞれが必要としているものもきちんと把握している。
「鉢屋、フォーメーションのことで相談があるんだが」
「今行きます」
八左ヱ門がバレー部に入部したころからずっとマネージャーをやっているものだから、すっかり顧問にもメンバーとして扱われていた。しかもその才能が買われてフォーメーションの相談まで受けるとは、俺マジ天才すぎる。お、今回は八左ヱ門もスタメンか。
試合開始、滝夜叉丸のサーブで始まった。セッターの八左ヱ門は、うまく七松先輩にトスを上げられている。おおっ、七松先輩の強烈スパイク。他メンバーがミスをせず、七松先輩がスパイクを決めてしまえばほぼ勝ったも同然だ。案の定、試合は早く片がついた。
「水とアクエリとポカリありますからね、みんな好きなの持ってって下さいよ」
試合直後の水分補給は大事である。
「ほら、ハチはこれだろう」
「お、おう」
「ヒュー、さっすが奥さん、八左ヱ門のことわかってるな」
「違いますよ。夜の立場で言えばハチが奥さ「バ、バカヤロッ」
真っ赤になっちゃって可愛いやつめ。先輩方は冗談のつもりで奥さんとか言っているというに。
次の部活の予定だけ告げられて、早々に解散した。帰り道、駅で他メンバーと別れて、二人きりで帰路につく。
「明日は休みか、ゆっくり体を休めろよ」
「・・・・」
「ハチ?」
「あ、のさ・・・・またあれやってくれね?」
「あれって?」
「この前、練習終わりにうちに来て、マッサージみたいなのやってくれたじゃん」
「あぁ、あれか」
「気持ちよかったから、またやってほしいなぁって」
「そういやアンアン言ってよがってたな」
にやりと笑って肘でつつくと、そういう意味の気持ちいいじゃねぇよ・・・・と恥ずかしそうに頬を染めてそっぽをむいた。
「今日、うち親いないからさ、よかったら寄ってってくれるといいな」
「よろこんで。体ほぐしてお望み通り気持ちよくしてやるよ。体の外も中もな」
「・・・・外だけで結構です」
おわり
バレー部の大会に行ったことがないので嘘ばっか。
鉢竹の日おめでとう!
2012.8/8
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[mokuji]
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