It grows up calmly.
社会人、にょたけ、鉢雷鉢、五い竹
○It grows up calmly.
「「妊娠したぁ!?」」
雷蔵と勘右衛門のすっとんきょうな声が、俺と雷蔵の愛の巣に響いた。ハチの突然の告白に、兵助は微動だにせず固まっている。
「どっちの子だ?」
俺も内心驚いてはいたが、極めて冷静を装いハチに問う。ハチは二人が好きで二人もハチが好きだと判明してしばらくの後、三人で恋人になるという奇妙な関係になった彼らは、大学を卒業してから三人で同棲していた。男同士で事実婚状態の俺たちより奇妙である。今日は全員の仕事が休みと言う数少ない機会。雷蔵が手料理をみんなに振る舞いたいと三人を呼んだのだが、さぁ食べようと言うときにハチが爆弾を落とした。ご丁寧に診断書までちゃんと持ってきているところをみると、言うタイミングを見計らっていたらしい。
「まだわかんない、そこまで調べてない・・・・」
「ハチィィイイ!」
ガバッと勘右衛門が抱きついた。
「どっちの子でもいい!ありがとう、そしてありがとう!」
「あー、うん・・・・」
「お、おめでとうでいいのかな?」
「いや、妊娠したってことはハチは仕事を続けられないってことだろう。日本じゃ産休後にまた同じポジションにつけないケースが多いし」
「あ、そっかぁ・・・・」
ついこの間、大きな仕事を貰えたとメールで喜んでいたのに。昔よりは産休育休の制度を良くしようと努力する会社は増えたが、それでも同じ部署に正社員ではなくパートとして再雇用するとか、人手の少ない部署にいかされるとか、まだまだ海外に比べるとこの国は弱い。だから、子供を作りたがらない女性が多くて少子化などの社会問題に繋がるわけだが、いま話しても仕方がないので置いておく。考えるべき問題は産休制度の実情ではない。
「仕事を辞めるか産休取るか」
「ハチ、どうする?」
「・・・・辞めたくない。でもどのみち、産休取っても辞めても仕事を中途半端に他人に押し付けることになるから、会社に迷惑かけちゃう」
「最終手段でおろすと言う手もあるが・・・・」
「それは絶対イヤ!」
「だよな」
兵助はまだ固まっている。それに気がついた雷蔵がゆさゆさと肩をゆすると、ハッとようやく我に帰った。
「はっちゃん勘右衛門、子供の名前はどうしようか」
「「気が早い!」」
ひとまず、雷蔵の飯を食べてから考えることになった。雷蔵の料理は、まさに男の料理と称するにふさわしい大胆なものである。今日のメニューは、ジャガイモやウィンナー、玉ねぎ、人参がごろごろした塩気の強いポトフに、鮎を丸ごと五匹、塩をまぶして焼いた鮎の塩焼きに、千切られたキャベツと切られていないトマトとぶつ切りキュウリのサラダに、水が少なくて硬めに炊けた白米、パックのままで皿にあけられてすらいない豆腐、そして一枚がやたらと大きいフライパンサイズのホットケーキだ。
「あ、おいしい」
「ホント?よかった」
しかし、改めて考えてみると、あのハチが妊娠したなんて信じられないな。虫大好き、男より漢前な少女として幼い頃は名をはせていたのに。同じように、女顔かつ弱虫で泣き虫だった兵助も、ちまたではクールビューティーと言われているらしいではないか。勘違いだ勘違い。勘右衛門だって一時期チャラチャラして女遊びが激しかったのに、いまじゃ会社で部長をつとめる出世頭だそうである。雷蔵にいたっては可愛さ倍増、カッコよさMAX、萌え度120%の自慢の恋人だ。誰にもやらん。
「それで、もし子供が産まれてきたら、兵助と勘右衛門どっちもお父さんと呼ばせるの?」
「もちろん。二人がイヤじゃなきゃそのつもりなんだけど・・・・どうかな?」
「えーっと、その件につきましては、俺たちの間でとある取り決めをしてまして・・・・」
「取り決め?」
急に二人のテンションが下がった。
「はっちゃんに子供ができたら、二人の内、父親じゃない方は身を引くという取り決めだ」
「な、なにそれ・・・・そんなの認めないから!何で勝手に・・・・!」
「ハチがそういうと思ったから言えなかったんだよ」
「どうして!?」
「父親が二人いるなんてことになったら、はっちゃんや子供が奇異の目で見られてしまうだろう」
「そんなの・・・・っ!」
「子供がいじめられるかもしれないって考えたら、そんなの関係ないって言えないよね」
「大切だから、守りたいからそう決めたんだ」
二人の強い想いに、ハチはそれ以上何も言えなかった。目に涙をいっぱいためて嗚咽を漏らす。それを兵助と勘右衛門が両脇から抱き締めた。
「次の休みに、三人で病院行って調べてもらおうね」
彼らが帰宅した後、なんだかしんみりとした雰囲気のまま夜を迎えた。
「僕さ」
「ん?」
「最初ハチが妊娠したって言った時、少し羨ましかったんだ。だって僕と三郎の間にはどう頑張ったって赤ちゃんできないんだもん」
「雷蔵・・・・」
「でも、あれじゃハチが可哀想だよ」
愛している人たちが自分の知らないところで、あんな取り決めをしていたなんて。しかも、どちらかを失わなければならない。雷蔵の目は、ハチを想って潤んでいた。
「だけど兵助と勘右衛門も将来を考えての苦渋の決断だったんだろう。頭でっかちらしい考え方だ」
「うん、だからハチにも僕らにもどうすることもできなくてもどかしいんだ」
ベッドの上、隣に座る雷蔵の手を握る。
「俺たちがすべきことは、あいつらがどんな結末を迎えようとも、友人としていままで通り側にいることさ」
「うん、そうだね三郎」
共に育った俺たちは、社会の波にもまれ、様々な苦難を乗り越えて、こうして大人になっていく。楽しいことも、辛いこともみんなで一緒にかかえようじゃないか。我が愛すべき幼馴染みたちよ。
おわり
こんな展開になる予定はなk(ry
もういいや、これで終われ。
もはやタイトルに意味はない。
ハチの保育学科設定もいずこへ?
2012.7/4
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[mokuji]
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