It grows up beautifully.

中学生、にょたけ

○It grows up beautifully.

「兵助、また学年トップだってさ」

放課後、部活が終わって雷蔵と教室で駄弁る。そこへ生徒会の集まりから戻ってきた三郎がやってきてそう宣った。兵助は絵に描いたような優等生だと思う。少し無愛想だけど、そこがクールだって言われて、しかもイケメンで女子にも人気があるし、小学生のころはいじめられっこの泣き虫だったなんて、同小出身者も忘れてるんじゃないかな。

「へーさすが兵助だね」
「まぁ昔っからガリベンだったもんな」

週に三日、おばさんに手を引かれて塾に行く背中を見送った記憶がある。俺以外の他三人も塾へ通ったり、家庭教師をとったりしていたらしいけど、遊びに誘わなきゃ休み時間でも教科書を読み続ける兵助は異常だった。

「そういえば、本当は隣町の私立中学行く予定だったんだよね」
「そうそう、みんなと一緒が良いって泣きじゃくって」
「ハチと雷蔵もつられて大泣きしてたよな」
「ばっか!三郎だって涙目だっただろーが」
「うん。あの時は勘ちゃんだけが冷静だった」

ガタガタと机に椅子をしまい、学校指定のおそろいの鞄を肩にかけて下駄箱へ向かう。左右に並んだ三郎と雷蔵は、少しだけ背が俺より高い。小学生のころは、俺が一番背が高かったのに。下駄箱につくと、ちょうど勘右衛門と兵助も帰るところだった。二人の背はまだ俺と同じくらいだ。

「あ、みんなも帰り?」
「おぅ」
「じゃ、いっしょに帰ろー」

うちの中学の学区内には、二つの小学校がある。俺たちが通っていた小学校と、もう一つの小学校。中学の正門を出て左に帰るか右に帰るかで、出身校は綺麗に別れる。俺たちは右だ。

「そういえば、兵助学年トップらしいね。おめでとう」
「そうそう、生徒会の資料に書いてあったね三郎」
「な。このガリベン」
「やめろよ」
「あ、照れてる?」
「照れてない」

兵助変わったな。クールって言われるわけだ。言葉遣いも男らしくなったし。変わったと言えばみんなも変わった。雷蔵は少し茶目っ気が出てきたし、三郎は前ほど雷蔵依存はひどくなくなった。勘右衛門は前よりも女子とつるむようになった。俺が部活仲間の女子たちと話していると、割り込んできて話に混ざる。何で少女漫画の話題に男子が混ざれるんだろう。外見も変わった。前を歩く四人は学ランを着ている。入学当初はぶかぶかだったそれも、体が成長してちょうど良さそうだ。女顔と言われていた兵助もみんなも、とても凛々しくなった。

「お前ら学ラン似合うよな」
「「「「え?」」」」

四人が一斉に振り向く。

「なんつーの?カッコいい?もう可愛いって言えないや」
「なっ!」
「カッコいいって言った?いまカッコいいって言った!?」
「わ、どうしよう照れる。そういうハチは可愛くなったねって言い返していいかな?でも可愛くなっただと、じゃあ前は可愛くなかったのかって失礼になるかな?」
「こ、ここここのばか!雷蔵が悩み始めたじゃないかっ」
「え、それ俺のせい?」

顔が赤く染まる様が面白い。やっぱりまだまだ可愛いかもな。

「ははっ」
「ちょっ、笑うな!」
「だってみんな顔真っ赤。すげぇ可愛いんだけど」
「可愛いって言えないって言ったのにぃ」

一頻り笑い終えた後、ふと思い出したように兵助が言葉を発した。

「なぁ、三郎たちも進路希望の紙もらったか?」
「あぁ、もらったな。既に提出済みだ」
「就職か進学か、と、どこがいいかだよね。僕と三郎は進学で、忍術学園の高等部にした」
「あーやっぱ忍高か」
「つっても俺たちはまだ二年だから、無難な学校書いただけだけどな」

進路希望調査表、先週配られたあれか。あれ期限って・・・・

「提出期限明日じゃん。忘れないようにしなきゃ」
「ハチはまだ出してないんだ」
「どこにすんの?」
「親は女子高入れて女らしくしたいって言ってたけど、できれば忍高」
「あははははは!ハチが女子高とか!」
「勘右衛門失礼だな!そういうお前はどうなんだよ?」
「忍高」
「無難だな・・・・兵助は?」
「じゃあ俺も忍高」
「「じゃあって」」

兵助は進学校行きそうだけどな。でもみんなでおんなじ高校行けたらいいな。

つづく

2012.7/2

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