▼ 04
窓から入ってきた光が眩しくて目が冴えた。ここで寝るのは2日になる。捕まって麻酔で寝ていたのが1日、昨日はキッドと話し、仲間になってないのに宴が開かれた。布団はあるがやはり床だと腰が痛いので血でベッドを作って寝た。ないよりはましでこういう時は便利だ。昨日皆が飲んでる間にお風呂には入ったので嫌な感じはしないが、お腹が減ったので部屋をでる。するとナイスタイミングで目立つ2人組が立っていた。
「起きたか。」
『あ、キラーさんだ。なにやってんのキッド。気持ち悪いよ。キラーさんの後ろでもじもじしちゃってさぁ。』
「お前なぁ!俺は謝ろうとっ、」
『謝る?なにを?麻酔銃使った事か俺様な態度をとった事か海楼石の手錠をはめた事?もう仲間と思われ考える暇もない事か。なんだかいっぱいあるけどどれの事?』
「んなにねぇだろ!全部ちげえし!昨日の事だ。キラーが謝れってうるせぇんだ。まぁ、名前の機嫌を損ねて船を降りられても困るし俺もそこまで子供じゃねえ。一応船長だ。」
『キッド…。なんだちゃんと船長なんだね。ガキっぽいとか頭悪そうとか思っててごめん。』
「お前なぁ!!俺の事性格悪いとか言ってお前も十分悪いじゃねぇかよ!!あぁ!!」
『キッドそんな事知ってるよ。私は性格が悪い。』
「開き直るな!」
「キッド主旨がずれている。」
キラーさんがはぁ、とため息をつく。なんだか本当にお母さんみたいだ。キッドを運んだ後そのまま部屋に帰ってしまったが宴の後片付けをする姿が容易に想像つく。そして私もキッド同様よくお叱りをうける。そしてまたキッドと張り合ってしまって面白さと気恥ずかしさでクスリと笑ってしまった。
「なぜ笑う。」
『いや、なんでも。で、なにキッド。あ、私お腹すいた。食堂どっち?』
「あっちだ行くぞ。で、酔っ払ってセクハラしたらしいが俺は覚えてねぇんだが。まぁ、悪い。」
『あぁ、酔っ払いの戯れ言と気にしてないからいいよ。かなり飲んでたしね。今そんなに元気なのが信じられない。』
「そうかお前は楽でいいわ。二日酔いとかあんまりしねえんだよな。」
どういう意味だコラ。女と見てないのか。キッドから女として見られたい訳じゃないがなんだか貶されてるのも腹が立つ。楽でいいというのはどういう意味だろうか。キラーさんが後ろから可愛いぞ、というかのように頭を撫でてくれてびっくりした。振り返ればしかめっ面してたからとのこと。なんて言えばいいんだろうか。この人無自覚のたらし?これもこれで反応に困るが可愛いし嬉しいのでよしとしよう。
「なぁ、お前キラーとあの部屋でなにしたんだよ。」
『あの部屋で何って、私手錠かけられてたんだからなにもできないでしょ。特になにもないよ。』
「だってあのキラーが女の頭をなでるなんてありえないぜ。なんだか昨日だって名前の事庇うしよ。」
『普通女の子に麻酔銃うって拉致って監禁したら庇ってくれると思うけど。でも会話したけど私キラーさんの前で寝てたし。本当にお喋りしてただけだよ。』
「なにをこそこそ喋っているんだキッド。」
「いや、お前はこういうのがタイプなのかと思ってな。まぁ、俺は最初にも言ったように年下に興味もねぇし、お前を襲う事はねぇから安心しぶっ!」
「…お前はなんで言っていい事と悪い事の区別がつかないんだ。」
はぁ、とキラーさんがため息をつく。私も別にキッドの事はなんとも思っていないが女子としてあそこは殴るべきだ。さっきから失礼だしね。しかし殴ったら食堂のドアごとキッドがぶっ倒れてクルーがこっちを見ている。まぁ、気にしないさ。別に蹴りでもよかったのを殴るで我慢してあげたのだから逆に感謝してほしい。
『キッド。私この船に乗る事もう一回よく考える。もう一回乗っていいのか自分に解いてみる。』
「なんでだよ!」
「明らかにお前のせいだ。」
「お頭が殴られて喧嘩をふっかけないなんてっ。」
「今日は雨か台風か。」
『おい。そんなに喧嘩早いわけ?私短気な男は嫌いなんだけど。まぁ、今までの言動と行動を見てると確かに頭脳派とは言い難いしね。いただきます。あ、美味しい。』
「コーヒー3つ。名前もコーヒーで大丈夫か?砂糖とミルクもあるが。」
『あ、キラーさんありがとうございます。』
ぶっすー、という感じでキッドがキラーさんの隣に座って私を見る。そんな嫌そうな顔するなら私の向かい側に座らなきゃいいのに。こんな愛想のない私のどこがいいのかわからない。ここまで突き放してもいれたいなんて。Mなのかな。それはそれで気持ち悪いな。
「…お前はワンピースをどう思う。」
『いきなりなに。洋服のこと?私ここに入ることになってもそんな奇抜なファッションお断りだからね。』
「ちげえよ!ひとつなぎの大秘宝の方だ。いいから答えろよ。」
『えー、私は海賊じゃないから海賊王とかよくわからないんだけど海軍に追われる様になって旅をしたら海には色んな事があることがわかって、それは楽しいと思うしまだまだ色んなものを見たいと思う。それにこの海はなんでもありだからワンピースもあると思うし海賊王になる夢を私は否定するあれもないし、えっとつまりいいんじゃないかな。別に、うん。』
【…。】
『あれ、これ答えになってない?』
「いや、十分だ。なぁ、キッド。」
「あぁ。ワンピースはある。そう思っていれば十分だ。そして俺が海賊王になる。」
『うん。なりたいとかじゃなくてその自信があればいけるよ。多分ね。』
【多分かよ!!】
『まぁ、頑張ってよ。』
「上から目線だ!」
「しかも他人事のようだ!」
「あいつ仲間になったんじゃないのかよ!」
クルーからの鋭いツッコミ。周りがぎゃーぎゃーうるさい。だから入るかまだ決めてないって。なのに君達が勝手に勘違いしてるんだろ。まぁ、対して強く否定しなかったけどね面倒だから。だって人生ってそんなに甘くないんだよ。海賊だっていっぱいいる訳でしょ?そんな簡単に見つけれらないよ。
「でもよ、ルーキーが3人いる海賊団なんてうちだけじゃねぇか?近づいたよな。」
「さすがお頭だぜ!!」
「でも女だぜ?だから入ったのかも不明だしよ。」
「昨日宴やったんだから入ったんだろ。しかも名前呼び。なぜかキラーさんはキラーさんだ。」
「てめぇら文句あんのか?」
【い、いえ。】
『ちょっと、権力振りかざすのはやめなよ。それに私まだこの海賊団に入るって決めてないし。』
「やっぱり。…じゃあ昨日の宴は?」
『勝手に開いたんだろ!あんたら勝手に拉致ったくせに文句とか言える立場と思ってるわけ!?しかも女だからなに!?絶対お前らより強いから!!まじ血を逆流させて破裂させるからまじなめんなよ!』
【スミマセン!!姉御!!】
「な、面白いだろ!」
「姉御…、名前のが年下だ。」
いや、キラーさんそこ!?私キラーさん以外の身勝手さに怒ってるんですが。もう、嫌。誰も話聞いてくれないし。何人かが可哀想にっていう同情の目で見てくれているけど。そう思うんだったら麻酔銃の時に止めてほしかったな。あの人たちとは仲良くなれそうだ。
『はぁ。』
「名前。」
『はい。』
「歓迎するぞ?俺はな。」
『…。』
「キラーさん!俺だって歓迎するぜ!!ルーキーって事は強いんだろ!?」
「なぁ、俺と手合わせしてくれねぇか!!どんな能力なんだ?」
「悪魔だろ?詳しい事は知らねえけどこの船の紅一点だー!!」
「今度はちゃんとした宴だ!!」
『いや待て。私承諾したっけ?』
「もう無駄だろ。」
『キラーさんまで!!』
クツクツ、と喉で笑うキラーさんにまぁ、いいかと思ってしまう自分がいて困った。本当に困った。島に着くまで考えればいいといった張本人はしれっとした顔で朝ごはんを食べている。こいつが船長でその下につくなんて考えられないけどこのくらいの立ち位置なら楽しいのに。
断れない雰囲気。
(それはそれで嫌じゃないけど)
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