09
見合い写真を見てため息をつく。何回かあった事のある貴族の人だ。マンマの話では元々歌姫の私のファンだったが当時はお互い幼くしかも私は島をでてしまった。そして戻ってきた時に仕事をする機会があり自分の意思をしっかりともった仕事ができる素敵な人と印象が変わったらしい。そこから歌姫の思慕が恋情へとかわった。しかし私はこの命を捨ててもいいから島を守るために必死だったのでそんな余裕はなく。

『それで最近は落ち着いてきたし今まで断ってきたんだけど幽霊船の話をジョーリィーがマンマにしたらしくて。元彼とようやく折り合いがついたならそろそろ次の相手を探したら、って事もあるらしいよ。まぁ、一番の理由は私を島の外に出したくないんでしょうけど。』

【…。】

『ちょっと、食堂に来た私になにその冊子、って聞いたのは皆じゃない。答えたのにだんまり?』

「そんなの俺は認めません!」

「うるせぇ、パーチェ。いやぁ、驚きすぎて言葉も出ないって奴だなァ。お前が結婚ねえ。」

「なんでデビトはそんなに落ち着いてんだよ!そりゃ結婚したらこの島にずっといてくれるって事かも知れねえけど、結婚なんて、まだ早いっつーか。」

「リベルタの言うとおりだ。島にいてくれるのはありがたいが嫁いでしまったらこの組織から抜けるということだろう?名前がいなくなるのは困る。」

『ノヴァがデレてる。貴重ー。』

「貴方はもう少し真面目に考えてください!」

『さっき十分驚いたから。それにこの人私の仕事に理解をもってくれてるみたいで島から出ないならここに勤めていいって言ってるみたい。住むのは向こうの家かもだけどね。』

「貴方まさか本当に結婚するつもりなんですか?」

「名前も案外結婚に夢見る普通の女だった、って事だな。玉の輿ってやつか?それで俺にこのファミリーに入れって言ってたのか?」

『違うよ。アッシュには普通に仲間になってほしいだけ。本当にこの話さっきもらったばかりだし。結婚するつもりはないんだけど。』

「なんだ、ないのかー。びっくりさせないでよー。安心したらお腹すいちゃった。ラザーニアおかわりー!」

「まぁ、今までだってこういう話は何度かあったが断ってたしなァ。騒ぎすぎたか。」

でも、会おうと思うの。なんて私が言ったら皆がまた固まった。確かに今までは断ってきた。それは色々やる事があったからだ。皆の健康状態も治し外で粗方人体実験施設もつぶした。後はダンテや諜報部がやってくれるだろう。引っかかっていた元彼とも話ができた。やはりそれが大きいかもしれない。マンマもそれをわかってやっているのだと思う。

『殆どの人が歌姫の私をみてお見合いを申し込むけどこの人はそれだけじゃなく私と会って仕事をしてやっぱり好きって認識したみたいだし。それにずっと片思いしてくれてたなんて可愛いじゃない。仕事も続けていいっていう寛大な人だし合わずに断るのは失礼でしょ。』

「今までのお見合いは全部会わないで即断ってたでしょ!」

『だから色々落ち着いたし、』

「お前が生きる事に前向きに考えてるのはいいことだ。だけどな俺達が今までなんのために男を避けてきたと思ってんだ。歌ってる姿見て幻想いだいてる奴らになんか大事なお前はやれねえ。」

『だから会うんじゃない。っていうかやっぱり私に彼氏ができなかったのはお前らのせいか。』

「そうだ。名前はこの3馬鹿が今までそうやってやってきた事を知らないだろう。今まで彼氏も作らず見合いも会わずに断る、というのは皆知っている。そんな常識の中で会ったら脈ありと勘違いされるんだぞ!」

『え、なにその私の知らない常識。あんた達なにしてくれてんの。』

「私はとめました。というかその頃私はお嬢様と一緒に住んでましたから。」

「大事な名前をどこぞの男なんかになんてやれないでしょ!付き合いたいなら俺たちを倒してから行け、ってことだよ。」

「それかなり難しいだろ。相手は一般人だろ?っていうか本人の好きにさせればいいじゃねえか。今断ったって他からもどうせ来るだろうしよ。」

「駄目!俺たちは昔から名前をお嫁さんにするって決めてたんだからお見合いするなら俺達が先だよ!」

ごほ、っとパスタが喉に詰まる。この大食い馬鹿はなにを言っているんだか。冗談でしょ、と見れば奴の顔は本気だ。島の外でやりたい事があるのはわかっていたし自分の命が短いなら他に幸せにしてくれる人を見つけてほしい、と身をひいていたらしい。本当に復活させた私は馬鹿だ。いや、嬉しいけど厄介な事になった。パーチェと結婚?まじでか。

『ごめん、想像つかない。』

「うわーん、デビト!振られたよー!」

「俺は別にお前が幸せならいいと思うけどなァ。好きだけど腐れ縁というか兄妹みたいなもんだしな。それに俺は身を固めるっていうのは性に合わねえ。」

『そうだね、デビトとはそんな感じ。私パーチェもそういう目で見てたというか。ルカはお嬢様命だからほっておいていいけどさ。』

「その通りですがなんだか癪に触りますね。パーチェは昔から貴方の事が好きでしたよ。デビトもそうでしたがそれはやっぱり家族愛ですから。」

「僕も名前に対しては家族愛だな。姉のように慕っている。貴方が幸せならそれが一番だと思うが、ここでパーチェの名前を出すなら僕はリベルタの名前を出す。」

「はぁ!?ちょ、待てってノヴァ!なななんで急に、」

「お前の馬鹿さ加減にはあきれるが幼馴染組がパーチェをおすなら僕がリベルタを押すしかないだろう。大体お前はわかりやすいから名前が好きってばればれだ。愚者なんかに、と思っていたがこういう状況になってしまったなら言った方がいいだろう。」

「わぁ、リベルタと俺ってライバルだね。」

「なんだかぎすぎすした三角関係じゃねえな。歌わなくても動物に好かれてるじゃねえか。犬みたいに単純な奴らに。」

「なんだとアッシュ!お、俺はその。名前が来てから守られてばっかりだったし助けてもらった。だから今度は俺が助けてやりたいって思ったっていうか笑っていてほしいっていうか、ああああ!なに言ってんだ俺!」

真っ赤になって机に突っ伏すリベルタ。普通に可愛い。え、なにこの公開告白。っていうかそれさっさといってくれよ。しかもこんな所じゃなくて個別にな。もう私の頭はお見合いどころじゃない。これがデビトとかだったらどうせ嘘だろ、とかさらっと流せたのになんでよりによってこの犬属性の2人なんだ。断ったら絶対しゅん、ってなるに決まっている。いや、そもそも私誰が好きなんだろうか。

「ふふ、面白くなってくたわねぁ。でも占い通りでよかったわ。」

「マンマ!いつからそこに、占い通りというのはどういう事ですか?」

「実はそのお見合いは嘘なのよ。貴方に島から出って欲しくないとかその辺は本当よ。そろそろ自分の事を考えてほしくってね。若い頃から島の事ばかりでろくな青春を送れなかったじゃない。占いで調べたら貴方ずっと心残りがあるから恋愛運最低だったのよ。するきないのだから仕方ないけど。」

『え、嘘?まぁ、元彼の事があったし島の事でいっぱいだったし。』

「そうなのよね。でも皆健康体になって彼とも上手く折り合いがついたっていうじゃない。それで占ってみたら新しい出会いを見つけるべきだってでたのよ。でも名前にそれを言ったってどうせ島を出たり仕事することしか考えないと思って、」

「それで見合いの嘘を?」

「そうよ。そうすればこうやって自分だって好きだって告白する人が現れると思ってね。貴方達はたから見たら若くって可愛いんだけれど勿体ないのよ。」

『えーっと、じゃあパーチェ達の思いに気付かせるためにわざわざ周りくどい事を?』

「最近平和すぎて暇だったのよね。」

『なに暇つぶしに使ってるんですか!そもそもこんな事されてもどうしたらいいかわかりませんよ!もう誰とも結婚しない方が楽です!』

「あら、駄目よー。ちゃんとその辺も考えてあるわ。いきなりあの2人のどちらかと結婚しろなんて言わないわ。そこは当事者の問題だし。でも退屈だから名前争奪戦でもやったらどうかしら。」

どうかしら、って明らかにやる気だよね。お嬢様の二の舞だよね。どこが当事者たちの問題なんだ。明らかに楽しんでいるじゃないか。マンマの話をざっとやくすとお互いにもっと触れあえという事らしい。パーチェとリベルタといろんなとこに行き話、触れあってどちららが好きか。はたまたやはり仲間なのか。まぁ、それならいいだろう。今は仲間と言う目線でしか見てなかったからそうやって考える時間はありがたい。

「まぁ、結婚はその後として付き合うとこから始めたらいいんじゃないかしら。相手を知る期間として色々やってみなさい。もしどっちも恋人として見れないのなら本当にお見合いは沢山きてるから心配しないでね。」

『いや、私は貴方の思考が心配です。お嬢様が最近かまってくれないからって。』

「しょうがないじゃない。ルカがずーっと1人占めしてるのよ。」

「なっ!私の事はいいじゃないですか!」

『ああー、じゃあ2人はそれでいい?私も考える時間ほしいしお互い知らない事も色々あるだろうし。』

「おう!俺の魅力と愛をたーっぷり名前に見せればいいんだよね?楽しみだなー。」

「呑気だなぁ。そんなにドロドロしてないし面白そうだ。それなら俺も参加するぜ。」

「はぁあ!?なんでアッシュまで参加すんだよ!」

「俺は俺で気になってたしな。恋心かって聞かれたら違うと答えるが誰かの物になる前の方が色々知れるだろ。相手を知るための期間なんだろ?じゃあ、いいじゃねえか。」

「まぁ、俺的には見てる分には楽しいからなァ。まぁ、暇があれば俺とも飲もうぜ。愚痴くらいきいてやらァ。この3人じゃお前が退屈しちまうだろ?」

「酷いデビトー。俺を応援してくれるんじゃなかったの?」

「俺は3人とも振られればいいと思ってるぜ。フリーの方が俺には都合がいい。満足しなかったら俺が相手してやるさ。」

『遠慮する。これ以上問題事はごめんだし。』

「まぁ、これから俺はあんたの部下の体質とかここの事とか聞いてファミリーに入るか吟味したいってのもあるから安心しろよ。けどあんまりぐずぐずしてると本当にもらっちまうかもな。」

『アッシュも余計な事言わないでよ!』

「はは、そうやって余裕崩す名前を見るのが案外楽しくってよ。」

俺だって負けないんだからな!と宣戦布告するリベルタと楽しそうにするパーチェ。泥沼の愛憎劇にならないのがこの人たちの凄いとこだ。ここにジョーリィーやデビトなんか入った日には私に体は持たん。精神心的な意味で。でも本当にこの3人をみていると私って動物にすかれる体質なんだな、と実感する。困った事があればいってくれ、と言ったノヴァだけが私を心配しているようだった。だって他はなんだか楽しんでるもの。どうなるんだこのカオス。




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