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最近平和だったことから使ってなかった懺悔室。そこに男たちがずらりと揃っている。パーパとマンマ、そしてお嬢様はいない。お嬢様がいない事によって空気が悪い。でもまぁ、こんな所にお嬢様を連れてくるのも忍びないので仕方ない。

「それで、今日は懺悔じゃないんですよね?夜にこんな大人数を呼んでなんの用ですか?」

「そりゃ、勿論名前の話に決まってんじゃねぇか。ああやって大々的に許可が下りたんだ。争奪戦のルールを決めようぜ。」

「おい、デビトは参加しないのだろう。ならなぜお前が仕切るんだ。リベルタ、パーチェ、アッシュの3人に決めさせればいいだろ。」

「たまにはひよこ豆も正論を言うじゃねえか。俺もそう思うぜ。っていうか船に帰りてぇ。」

「たまには余計だ。馬鹿なのはリベルタであって、僕はいつも正論しか言わない。」

「今日俺の味方をしてくれたと思ったらやっぱりいつものノヴァだな!」

ぎゃあぎゃあ、と騒ぐ年下面子。名前お見合い事件は食堂で解決した。なのに夜、ジョーリィーがここに私達を呼びだした。いつもならこのクソジジィ、と喧嘩を売るデビトもなぜか楽しそうにしている。なんというか、

「貴方達、面白がっていますね?」

「酷い事を言うなルカ。私はただ可愛いファミリーがどこぞの馬の骨にとられる位ならこのファミリー内で結婚した方がいいと思っているだけだ。そうすればこの屋敷からも出ず実験結果がうかがえる。」

「後半はジジィに反対だが大体は賛成だァ。名前は目を離したうちに変な事し始めるからなァ。監視できるならそれに越したことはねぇ。」

「確かに前回のモンドとパーチェの件といい、助かったには助かったが…。自分を犠牲にしてまで体に負担をかけてほしくないのが本音だ。島の外に出てしまっては見ておけんからなぁ。」

「でもマンマもそのために今回のこの計画をたてた。そして貴方達は丁度名前が好きでアプローチをしていく、それで話は終わったのでは?」

「そうだよー。俺達が名前に色々知ってもらうために過ごせばいいんでしょ?なのにどうして収集をかけるのさ。」

「ルールを決めようと思ってな。こんな面白い事私が見逃すと思うか?名前については私の中でもデータがすくなすぎる。」

「まぁ、いつも飄々としている歌姫様の焦った顔が見たい訳だァ。お前ら3人ほっておくとなにもしないで終わりそうだからなァ。」

「それ、名前にも俺たちにも失礼じゃね?つか、俺たちを暇つぶしにするなよな!」

確かに彼女が照れたり、焦ったりしている所は見た事がない。前の恋人も島の外での恋仲であったためその姿を見た事がない。甘えたり、嫉妬したり、そんな姿想像がつかない。なんだか妹と思っている名前のそんな姿を想像するのは居心地が悪い。

「大体ルールってなんだよ。なにもしなさそうって、んなの俺たちの自由だろ?」

「そうだよー。それにアプローチしていいって言ってるんだから。何もしない訳ないないでしょ。デビトは心配性だなぁー。」

「じゃあ、パーチェ!一応聞くがてめぇはあいつにどういうアプローチをしようと思ってんだ。」

「んー、そうだなぁ。まずは俺が大好きなラッザーニアのお店に連れていくでしょ。俺が好きなものをもっと知ってもらうために。それから町をぶらぶらして。あ、タンバリンクイズもいいよね!」

「ほらな。いつもの日常とかわらねェ。」

「はっ!本当だ!」

「次、リベルタ。言ってみろ。」

「ええ、俺!?ジョーリィーから名指しとか…。」

「頑張れリベルタ!俺が女性の扱い方を…、教えてなかった!すまん!」

「ええ!?あー、そうだな。でも、俺を知ってもらうんだから、とりあえず仮面を見せる、とか?ああ、名前に似合う仮面を選ぶのもいいな。それから海には絶対行くだろ。」

「なんとなくデビトの言う事がわかりました。」

リベルタもパーチェも天然だ。言葉や行動はストレートだがそれがいつもの事なので大差ない。しかもパーチェは小さい頃から過ごしている分今から知ってもらう、というのも難しい。恋人になったら、という意識させる目的ではあるが、

「これは前途多難ですね。アッシュの事はほとんど知らないのでただ触れあっていくだけでいいとは思いますが。貴方達2人に関しては同僚からのシフトチェンジを狙わないとですね。」

「そういう事だ。ルールその1、スキンシップを多めにとること。」

「ハグとかって事?そんなの全然オーケーだよ!」

「はははっは、はぐ!?まじか。でも、じゃなきゃ意識してもらえないのかっ。でも、そういうのって勝手にしていいものなのか!?」

「もう面倒だ。まぁ、簡単に言えばルールなんて事は特に決めないがいつも通りでは話は進まないという事だ。私は研究室に戻る。今回の話し合いを頭にいれてしっかり行動するように。いい結果を期待している。」

「まぁ、とりあえず思い思いに過ごせばいいんじゃないか?なにかあったら言ってくれ。くれぐれも名前に迷惑をかけないように。俺も仕事が残ってるから行くからな。」

「おっさんどもは言いたい事言って帰ってったな。さて、ここからが本題だ。」

「さっきのが本題じゃなかったのかよ。おい、リベルタが顔赤くしてから戻ってこないぞ。」

「いつもの事だ、気にするな。それでデビト、本題とは。」

「俺たちも争奪戦に参加する。」

はぁ!?という声がはもる。なぜそうなった。というか俺達、という達は私も入っているのでしょうか。その目線に気付いたのかルカはバンビーナしか眼中にないからいい、と言われた。間違ってはないのですが複雑ですね。

「ルカはあいつの相談役とか中立立場とかやってくれればいいさ。」

「ようはいつもの尻拭いとか可哀想なポジションですね。」

「まて。デビトは名前をそういう風に見ていないし僕も姉と思っていると言ったはずだ。3人がアプローチすればいい話では?」

「考えたんだが俺はあいつが好きだ。それが家族愛だとは思ってはいるが考えてみたら、」

「考えてみたら?」

「抱ける。」

「なななななな何言ってんだよ!」

「貴様!名前をそういう目で見るなんて!ここでたたき切ってやる!」

「これだからお子様は。結婚の延長上で考えたら大事な事だろォ。抱けるって事は女として見てるって事だ。あいつを自分のものにするのも悪くない。他の奴らにあげる位ならなァ。まぁ、暇つぶしも兼ねてはいるが。」

「そんな気持ちではいってこないでよデビトー。俺たちは本気なんだから。」

「その本気の気持ちが勝つかどうか選ぶのはあいつだ。大体名前だってこれから候補として触れあうなら候補は多い方がいいだろ。ノヴァだって嫌いじゃねえんだろ?」

「それはそうだがっ、」

「俺は別にかまわないぜ。ライバルが増えたほうが面白そうだ。」

「なんというか、本当にお嬢様の時再現、って感じですね。私は見守ります。でも、そうやって参戦するならなぜ最初に言わなかったんですか?」

「あのおっさん2人も参戦したら大変だろうが。まぁ、負ける気はしねえがジジィが名前に近づくだけでも吐き気がする。で、ノヴァ。お前はどうすんだ?思慕だって愛情の1つだ。リベルタより自分の方が幸せにできる自信があるんじゃねえのか?」

「それはそうだ。」

「なんで俺が貶されるんだよ!っていうか昼間俺の応援していただろ!」

結局デビトの口車にのせられ私を除くここに居る全員が参戦する事になった。そこでデビト、ノヴァ、アッシュは自分の気持ちを考えるとのこと。名前だけではなくこっちサイドも家族愛なのか、恋愛対象なのか見るという事ですね。でもなんだかとんでもない展開です。

「とうことだ。覚悟してろよ俺のアモーレ。」

『意味がわからない。朝から押しかけてきたと思ったらなんなの。』

「昨日話し合った結果だ。僕たちも自分の気持ちと向き合うために名前と共に過ごしてみる。」

「まぁ、皆名前の幸せを願っての事だから!」

「そうそう、せっかくなら幸せになってほしいしな!」

「私はお嬢様命なので。」

「めんどくせえが面白そうだ。」

『ありがた迷惑。私もよんでよその会議!』

「当の本人がいたら意味ねえだろ。まぁ、こっから先は各自だから個人行動だな。じゃあまず俺と今夜どうだ?」

「あー、ずるいデビト!あと、恋人同士になるまで抜け駆け禁止だからね。キス以上は駄目だよ。」

「キスなんて挨拶だろうが。キスなしでどうやって女をおとせってんだ。」

「リベルタ鼻血をだすな!」

『その話、本人のいる前でしないでよ!』

昨日の会議も聞かなくてよかったですね、と慰める。疲れた顔をしているがそれでも愛されているとわかっているのか恥ずかしそうにほほ笑む彼女。大切な妹の様なこの存在が私の手を離れるのはなんだか寂しい。でもこの中ならいい、と思う自分もいるのだった。



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