どっちが攻めなのか分からない
息をのむほど流れるきれいな髪をして、透き通った瞳をした彼に私は一目ぼれでした。
「まぁ、最初は女の子かとも思ったけど」
「は?」
呆れた目をしてマルシベールはため息とともに読んでいた本から顔をあげて私を見てくる。
今じゃ、流石に彼のことをよく知っているので女の子に間違うことはないけど初対面の時はマジでそう思った。
「じゃあ君は女子だと思った俺に惚れたってこと?」
「そーいうことになる、ねぇ…アハハ」
プライドの高い彼に今の発言はどうなのだろうと思いちらっと見てみるとなんと驚いたことに彼は笑っていた。…但し、微笑みのはずなのに私がゾクッとするほどの陰のある笑み。
「ふふふ」
「こわっ」
何この人、笑いが不気…。とにかく、本当にぞっとするほど今の笑は怖いです、ええ。グリフィンドールのメリー・マクドナルドに服従の呪文を掛けたときはもっとカラカラ笑っていて怖いな、とは思っていたけれどその時と比にならないほど怖いんですけど。イケメンって笑うと怖いものなのだろうか…。
「ファースト、言っていいことと悪い事ってあると思わないかい?」
「そう、だね」
「男だからこそ俺という存在が出来上がるんだろう?」
「…あ、なんだ私の一番最初のセリフに怒ってたんだね」
「それ以外に何か?」
「いえ」
女子だと思っていた子に惚れた〜って件じゃなかったのね。彼を女子だと思ったことに怒っている、と。
「でも仕方ないでしょう…入学したばかりのあなたは髪が今よりだいぶ長かったし」
エイブリーほどではないけれど。
「…スカート履いてたし」
「っ、いや、あれは…っ!!」
おお、今度は赤くなった。やばい、可愛いなんて思いたくないけど可愛い!口元が緩むほど可愛いんですけど!?
「あれは…ルシウスが俺のズボンを剥いで代わりにスカートしかなかったからで」
「レパロで直せたはずなのに…」
「…うるさい」
ふいっ、と私から顔を背けるマルシベールの頭部の正面になるように私も反対側に行った。
「顔真っ赤ですよ?Mr.マルシベール」
「うるさい、見るな」
「可愛いんだから良いじゃん」
「男は可愛いと言われても嬉しくない」
「まぁまぁ、事実可愛いし!…その屈辱的な顔も」
「ほんと、うるさいよファースト」
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