shortstory | ナノ


  こじらせ系ポッター


同じ学年、同じ寮となってしまったファースト・ポッターはどうやら僕のことが嫌いらしい。つい先程まで乗っていたホグワーツ行の汽車の中では幼なじみのセブルスに対してと、グリフィンドールとスリザリンどちらも選んでいなかった僕に対して、これまた同じ学年と寮になったシリウス・ブラックと一緒に僕たちをバカにしたのだ。
おそらく泣いていた僕に対してだろうけどスニベルス(泣きみそ)とまで言われたのは流石に腹が立ったので大広間では何度か声をかけられたけど無視していた。

きっと彼らはマグル生まれである僕のことが嫌いなのだろう。セブルスのもっていた本に確かマグル嫌いは魔法界に少なくないとまで書かれていたし。ポッターとブラックもそのうちのひとりなのかもしれない。

まあいい。僕は既に友達ができたし、同じ寮だからといって彼らに接点持たなくても平気だろう。からかわれても無視すればいいだけだし。いやでもセブルスは大丈夫だろうか。セブルスプライドだけはいっちょ前だけど撃たれれば倒れる女の子だし……。

そうこうしているうちに監督生に連れられてグリフィンドールの寮へつれてこられた。友達とみんなで部屋を確認しあってさあこれからシャワーを浴びて寝るぞとというところで僕の前にポッターが立ちふさがった。

「やあエバンズ! お友達と離れちゃったけど気分はどうだい?」

「悪いけど僕は今きみに構っている暇はないんだ。明日にしてくれない」

「水臭いなあ!」

そういうと彼女は僕の腕をとる。
急な距離の近さに正直引いてしまった。

「あのなんかガリガリのお友達はスリザリンなんかに行っちゃったけどさ、私たちは同じグリフィンドールなんだ! ね、仲良くしようよ」

「あのさあ、人の友達のことそんなふうに言わないでくれない?」

セブルスがガリガリなのは事実だけどそれは家庭環境のせいだ。ホグワーツで美味しい食事をとればきっと年相応の女の子らしい柔らかい体つきになるはず。
とはいえ、それを何も知らない他人に言われたくはなかった。つい声を低く、怒鳴ってしまえばポッターはぽかん、と目を丸くした。……ま、まあ悪くない、よね。僕はセブルスのことを悪く言われたくない。

ふるふると頭を下げ、ポッターが震えたかと思うと、次の瞬間には勢いよく顔を上げた。その頬は紅潮しており、目の奥には幻覚だろうけどハートが浮かんでいる。はあはあと息を荒げ、恍惚の表情だ。

「ポ、ポッター」

「ああ、エバンズ! いやリリー!」

なんか急に名前呼びになったんだけど。

「汽車のなかから思っていたんだ、きみはまさに運命の人さ! 私の理想の男性が服を着て歩いてるような人! そのうえ性格は友達思いで……っていうかその冷たい瞳が素敵!!」

「なにいってるのきみは!」

「そうだよファースト!!!」

あ、ブラック。一体どこから飛び出してきたのかわからないけどとりあえず回収してくれないだろうか。あとネクタイをきちんと締めなさい。

ポッターはといえば僕の腕をつかんでいた手にぎゅっと力を込めた。なんだか嫌な予感がする。

「好きだリリー! 付き合って、むしろ結婚して!!!」

「目を覚ませファーストっ! 確かにエバンズは美少年だけどいきなりすぎるからっ」

「待ってブラックそのツッコミはおかしいから」

こうして。
いろいろこじらせているポッターから求愛される日々が始まったんだけど、それはまた別の話。

2016/06/13

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