shortstory | ナノ


  それは理由になるのだろうか


Q.恋人のどこが好きですか?

「顔」

「は!?」

サラッと答えたファーストに驚愕の表情を向ける。…もしかしたらそれはいつものように冗談で、落ち込んだ俺をみて「やーい、引っ掛かった!!ウケルー!!」とか大爆笑するつもりかもしれない。
しかし期待していた言葉は彼女の口から出ず、むしろうんうんと頷く。その顔は今までに見たことがないくらい真剣そのものだった。

「うん、やっぱり顔だね。ホグワーツに入学してから、恋人になってからずっと君のことを見てきたけど、顔しか良いところがないと思う」

「真面目な顔で恋人侮辱してんのか、お前は」

「だって、シリウスさ。ヘタレだから未だにキスの1つもできないし、男の癖に乙女なとこ…っていうか女々しいところがあるし、女の子に対して愛想がないし、ブラコンだし。…性格ならやっぱりリリーの方が僕好みだよ!」

そういってファーストは友達とペチャクチャ喋るエバンズに向かって投げキスをする。ファーストからの投げキスをかわす素振りを見せ、エバンズは舌打ちをしてファーストに中指を立てた。「そんな君も素敵だよ!」とかいうこいつは、恋人だけどかなりキモイ。引くわ。

再び俺に向き直ったファーストは恍惚の表情を浮かべてキラキラと顔を輝かせている。やっぱりキモイ。

「じゃあ逆に聞くけど、君は僕のどこが好きなのさ」

「は?………ぜ、全部…」

「女子か」

「!?」

確かに恋人に何処が好きかときかれて全部、と答える女は少なくないだろう。それでも、本当に全部が好きなんだから仕方がない。

「じゃあ細かく言ってみてよ」

「はあっ!?おまっ、俺が『全部』って言うのにどれだけ勇気が必要だったか分かるか!!?」

「知らん、このヘタレめ。早く言いなよ」

「ぐっ」

厄介なことにファーストというやつは一回言い出したら絶対にやめないタイプだ。つまり俺が全部を言うまで聞くのを止めないだろう。
ニヤニヤしながら「はーやーくー」というファーストの眼鏡を割りたいという気持ちを抑えて、ゆっくり口を開いた。

「あ、頭が良いところ」

「他には?」

「悪戯が好きなとこ」

「他」

「胸が大きいとこ」

「セクハラ。他」

「友達思いなとこ」

「他は?」

「あと、……って、さっきよりニヤけてないか?」

「五月蝿いよ!」

本人はニコニコしているつもりかもしれないが、他のやつからみたらキモイくらいニヤニヤしている。
ニヤニヤニヤニヤしながらファーストは呟いた。

「シリウスってばほーんと、僕のことが大好きだね!」

「う…」

「あ、もう1つあったよ!シリウスの好きなとこ」

そういってファーストは最大限の笑みで言うんだ。

「君が僕を好きなとこ!!」

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